最新記事
アメリカ外交

米下院議長、台湾の蔡英文総統と会談 軍事・経済の協力強化を表明、中国は反発

2023年4月6日(木)13時41分
ロイター
マッカーシー米下院議長と台湾の蔡英文総統

マッカーシー米下院議長(共和党、写真中央)は5日、台湾の蔡英文総統(写真左)と米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のロナルド・レーガン大統領図書館で会談を行った。(2023年 ロイター/David Swanson)

マッカーシー米下院議長(共和党)は5日、台湾の蔡英文総統と米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のロナルド・レーガン大統領図書館で会談を行った。

台湾総統が米国で下院議長と会談するのは、1979年の断交後初めてとなる。中国側は会談を行えば報復すると表明していた。

蔡氏は民主主義が脅かされた際に台湾に寄り添ってくれた米議会に謝意を示した上で、マッカーシー氏および他の共和・民主両党議員に「平和を守るためには強くなければならない」との信念を伝えたほか、会談後には「われわれは一緒にいるときにより強くなれる」と述べた。

マッカーシー氏は、他の両党議員も同席した会合の冒頭で、蔡氏を「米国の偉大な友人」と呼び、「米台が経済的自由や民主主義、平和および安定の促進に向け協力する方法を模索できると楽観視している」と述べた。

さらに「米台の人々の友好は自由世界にとって極めて重要な問題だ」とし、「われわれは義務を果たし、全ての米国民が団結している共通の価値観へのコミットメントを改めて表明する」とした。

会談後には、蔡氏と非常に生産的な協議を行ったとした上で、米国は台湾への武器売却を継続し、貿易や技術分野などで経済協力を強化する必要があると述べた。

また、台湾に対する米国の支援は今後も強固で揺るぎないものになると強調した。一方、中国との緊張を高める意図はないとも述べた。

中国外務省の報道官は即座に会談を非難し、米国は「台湾独立」を目指す分離主義者と共謀しており、長期にわたり台湾を巡るコミットに違反していると批判した。

中国国防省も中国人民解放軍がその責任と使命を堅持し、常に厳戒態勢を維持すると表明。米側が台湾問題を巡り、中国に行った政治的約束を順守するよう求めるとした。

中国福建省の海上保安当局は、台湾海峡で特別合同巡回・視察活動を開始した。台湾はこの動きに対し、中国に強く抗議したと明らかにした。

一方、ブリンケン米国務長官はブリュッセルでの記者会見で、蔡氏の訪米は目新しいものではなく、「プライベートかつ非公式」なものとの認識を表明。中国に対し、今回の蔡氏の訪米を「口実にし、緊張を高め、現状を変えることをさらに推し進めるような行動を取るべきではない」と述べた。

中国は、台湾は自国領土の一部であり必要な場合は武力で支配下に置くと宣言しており、この会談に強い反発を示すことは必至とみられる。

ただ、アナリストの中には、中国の反応は昨年のペロシ米下院議長(当時)の訪台時より穏当なものになると予想する向きもある。

カリフォルニアでの会談は、マッカーシー氏がかねて希望していた訪台に比べ、中国の神経を逆なでする可能性は小さいとみられているためだ。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米9月PPI、前年比2.7%上昇 エネルギー商品高

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る EV駆け込

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中