最新記事
ウクライナ戦争

注目すべき変化「ゼレンスキーが軍事に口出しし始めた」 小泉悠×河東哲夫

THE DECISIVE SEASON AHEAD

2023年4月3日(月)18時15分
小泉 悠(軍事評論家)、河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)、ニューズウィーク日本版編集部

230404p18_TDN_05.jpg

西側がウクライナに提供する戦車は「ゲームチェンジャー」になるか(写真は米軍のエイブラムス) INTS KALNINS-REUTERS

ザルジニーが言っているのは「別にバフムートを守らなくてもよくない?」ということですね。バフムートを守るのが苦しいから、早く放棄して、防衛線を引き直して、(ロシア軍に)消耗を強いるんだったらそこでやればいいという話なんですよ。

だけどゼレンスキーは、バフムートが落ちることの政治的意味を重視して撤退を認めず、むしろ増援をつぎ込んでいる。

3月6日の会議で一応、この方針をザルジニーと陸軍司令官の(オレクサンドル・)シルスキーに認めさせているんです。もちろん戦争は政治目的に奉仕しなければいけないから、最高司令官であるゼレンスキーに従う義務が軍にはあるし、そこで反逆せずにきちんと従うザルジニーは偉い。

けれども、この1年間はゼレンスキーが軍事にあまりうるさく口出ししないで、軍事のプロたちに任せていたからうまくいっているところもあった。一方、プーチンはかなり細かいところまで口を出していて、これがロシア軍の足を引っ張っていると言われている。

ゼレンスキーがそういうことを始めると、これまでの有能なウクライナ軍であり続けるだろうか、と怪しくなってくるわけですよ。もちろん政治指導者の介入が絶対駄目ということはないですし、政治指導者のほうが軍人より正しいことを言っている場合も往々にしてあるので、一概には言えませんが。

■河東 小泉さんがテレビで先日おっしゃっていた、西側の戦車が重すぎてウクライナの橋を渡れないという話は面白いと思いました──鉄道で持ち込むかもしれないけれど。いずれにしても100台にも達しないような戦車で、局面が変わるほどのことはできないんじゃないか。

日露戦争で(日本は)軍艦から長距離砲を外して高地まで引っ張り上げ、旅順港のロシアの軍艦をやっつけた。同じように西側の戦車も、長距離砲の代わりに使うかもしれない。

それからもう1つ注目しているのは、今回の戦争の初期にロシアの戦車は西側のジャベリンという携帯型(対戦車)ミサイルでずいぶんやられたんですが、そのジャベリンをロシア側がずいぶん鹵獲(ろかく、接収)した。東ウクライナのロシア軍がジャベリンをかなり持っているようです。そうすると、西側の戦車がジャベリンにやられるんじゃないか。射程距離の面で駄目かもしれませんが。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米5月求人件数、37.4万件増 関税の先行き不透明

ワールド

日本との合意困難、対日関税は「30─35%あるいは

ワールド

トランプ大統領、貿易交渉で日本よりインドを優先=関

ワールド

仏・ロシア首脳が電話会談、ウクライナ停戦やイラン核
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中