最新記事
ウクライナ戦争

注目すべき変化「ゼレンスキーが軍事に口出しし始めた」 小泉悠×河東哲夫

THE DECISIVE SEASON AHEAD

2023年4月3日(月)18時15分
小泉 悠(軍事評論家)、河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)、ニューズウィーク日本版編集部
ゼレンスキー

これまで軍事に口出ししなかったゼレンスキーだが、その態度に変化も見られる UKRAINIAN PRESIDENTIAL PRESS SERVICE-REUTERS

<西側提供の戦車は「ゲームチェンジャー」にならない? 日露戦争の日本軍の戦略が参考になる? 日本有数のロシア通である2人が対談し、ウクライナ戦争を議論した>

※本誌2023年4月4日号「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析」特集に掲載した10ページに及ぶ対談記事より抜粋。対談は3月11日に東京で行われた。

※対談記事の抜粋第3回:ロシア・CIA・親ウクライナ派、ノルドストリーム爆破は誰の犯行か 河東哲夫×小泉悠 より続く。

――戦争のディテールについて伺いたい。小泉さんは先ほど、クリミア奪還のためには最新型の戦車が必要だとおっしゃいました。ドイツのレオパルト2、イギリスのチャレンジャー。いずれもウクライナに供与され現在訓練中ですが、この最新戦車はこの戦争を変える「ゲームチェンジャー」になるでしょうか。

■小泉 私はあまりゲームチェンジャーという言葉が好きではないんです。この戦争でますます好きじゃなくなった(笑)。新兵器が入って戦況が変わるということはあまりない。

野球で考えれば、草野球チームに大谷翔平を連れてきたらどうなるか。あまりにもアンバランスすぎます。バッテリーの相性があって、守備陣がいて、監督の采配があって、コーチ陣がいて......と全体で戦うわけです。

ウクライナへの兵器供与については、どういう能力が与えられ、ウクライナ軍がどういう能力をつくれているのか、という観点で分析したほうがいいと思っています。

そういう意味で別にレオパルト2であってもなくてもいいんです。きちんとした性能の第3世代戦車がまとまった数入ってきて、それをロシア軍の攻撃を受ける恐れがない場所でしっかり訓練をする時間が取れる。それにより3個戦車旅団をつくれれば、ロシアの南の防衛線にくさびを打ち込む十分な力になる。

後は、できればその戦車旅団を支援する航空戦力。特にロシアの防空システムを制圧できる能力を持った戦闘爆撃機がまとまった数必要です。そしてロシア軍の火力発揮を制約するために、相当(ロシア軍陣地の)奥の地域をたたける射程の長い火力。これらが3点セットでそろって、さらに、それなりに訓練できた兵隊が何万人かいれば、これこそゲームチェンジャーです。

おそらくウクライナ軍はこういう能力を近々持とうとしており、今その準備中だろうと思います。

それが本当に効果を発揮できるかどうかは、ロシア軍をどのくらい弱らせられるかということと、バフムートの戦いでウクライナ軍自身が弱ってしまわないようにすること。この2つが肝要で、その意味でも今のバフムートの戦いは非常に注目される。

ただ最近、これも独ビルト紙が報じていますが、バフムートを守るかどうかでゼレンスキー大統領と(ウクライナ軍のワレリー・)ザルジニー総司令官が対立しているという。

先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪6月失業率は3年半ぶり高水準、8月利下げ観測高ま

ビジネス

米J&J、通期業績見通し上方修正 関税費用予想は半

ビジネス

午前の日経平均は小幅に続落、半導体株安が重し 下げ

ビジネス

長期金利の国民生活への影響注視、為替動向を憂慮=青
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中