最新記事
事件

「折り畳んで持ち帰った」──21歳の階級の低い兵士による機密文書の流出は「謎」ではなかった

2023年4月19日(水)18時41分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
ジャック・テシェイラ

逮捕されたテシェイラは基地の情報部門でIT技術者として働いていた SOCIAL MEDIA WEBSITEーHANDOUTーREUTERS

<セキュリティが「穴だらけ」だった米軍。まずは米政府がシステム強化に乗り出すだけ>

米国防総省の機密文書が大量に流出した事件で、4月13日にマサチューセッツ州の空軍州兵に所属する空兵のジャック・テシェイラが逮捕された。

この事件に関して不可解にも思える点の1つは、どうして比較的地位の低い21歳の兵士が機密文書にアクセスできたのかという点だ。

しかし、実はこの点は決して不可解ではない。

テシェイラが勤務していたマサチューセッツ州のオーティス空軍州兵基地は、アメリカとカナダの上空を飛ぶ物体に対する検知と追跡、防衛などを担う北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が米北東部に置いている数少ない基地の1つだ。

ある元米情報将校によると、同基地ではその任務を果たすために、「JWICS(統合全世界情報通信システム)」という国防総省のネットワークにアクセスできるようになっている。

このネットワークには、世界中の国々の航空機と空軍兵器、軍事作戦、外交政策の意思決定に関する情報が全て集約される。

テシェイラは軍での地位こそ低かったが、基地の情報部門でIT技術者として働いていて、JWICSへのアクセスが可能だったと考えられる。

ネットワークにアクセスできれば、その中のあらゆる情報を検索できたはずだ。前出の元情報将校によれば、いくつかの情報流出事件を受けて数年前にシステム変更が行われ、JWICS内のファイルをダウンロードすることはできなくなった。

テシェイラが当初、手書きで機密文書を紙に書き写したり、概要を書き留めたりしていたのは、この措置が理由だったのかもしれない。

しかし、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズの報道によると、テシェイラはのちに、文書を印刷し、折り畳んで家に持ち帰って、それを写真に撮って流出させ始めたという。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、政策決定で政府の金利コスト考慮しない=パウ

ビジネス

メルセデスが米にEV納入一時停止、新モデルを値下げ

ビジネス

英アーム、内製半導体開発へ投資拡大 7─9月利益見

ワールド

銅に8月1日から50%関税、トランプ氏署名 対象限
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中