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策士トランプ、起訴への怒りで支持拡大狙う 共和党支持層の「トランプ劇場疲れ」の可能性も

2023年3月31日(金)14時15分

米ニューヨーク州大陪審に起訴されたトランプ前大統領は、司法制度が「兵器に使われた」と訴えることで岩盤支持層の怒りをあおり、起訴を2024年の大統領選予備選に向けた追い風にしたい構えだ。写真は1月、テキサス州コンローで開かれた集会で、支援者に手を振るトランプ氏(2023年 ロイター/Go Nakamura)

米ニューヨーク州大陪審に起訴されたトランプ前大統領は、司法制度が「兵器に使われた」と訴えることで岩盤支持層の怒りをあおり、起訴を2024年の大統領選予備選に向けた追い風にしたい構えだ。しかしそうした訴えは共和党支持層の間でかえって「トランプ劇場疲れ」を引き起こし、別の共和党候補に目を転じさせる可能性もある。

ニューヨーク州大陪審は30日、トランプ氏が2016年の選挙戦期間中、不倫相手のポルノ女優、ストーミー・ダニエルズさんに口止め料を支払ってもみ消しを図った疑惑を巡り、トランプ氏を起訴した。米大統領経験者が起訴されるのは初めて。

しかし同氏の支持者らは、起訴は政治的動機に基づいて行われたと考えており、24年大統領選の共和党予備選で同氏を支持する決意をいよいよ強くする可能性があると、党幹部や政治アナリストはロイターに語った。

ニューハンプシャー州ベルクナップ郡の共和党委員長、グレッグ・ホウ氏は「(起訴はトランプ氏に対する)嫌がらせ以外の何物でもない」と明言。納得のいく有罪判決に至らない場合、トランプ氏への支持は「月に届くほど」高まるだろう、と予想した。

トランプ氏は今月、自らが起訴される可能性があると警告を発し、約200万ドル(約2億6600万円)の献金を集めた。30日には「史上最大級の政治的迫害にして選挙干渉だ」とする声明を発表したが、その証拠は示していない。

共和党の選挙参謀、ジョン・フィーヘリー氏は今回の起訴について、トランプ氏が2020年の大統領選挙結果や、激戦州における自らの負けを覆そうとした疑惑を巡る捜査に比べれば、「くだらない」内容だと指摘した。

トランプ氏が共和党予備選で大統領選候補者指名を勝ち取るには、共和党の25―30%程度と見積もられている岩盤支持層以外にも支持者を広げる必要がありそうだ。特に今後数カ月間で共和党候補者が絞られてくるとその必要性が強まるが、起訴によってそのハードルは高まるかもしれない。

フィーヘリー氏は、「トランプ氏が起訴される可能性がある全事案の中で、今回の件は上位20件にも入らない」としながらも、「トランプ氏はちょっとした緋文字(らく印)を押された格好で、ライバル候補が攻撃材料に使うかもしれない。そうした攻撃は、支持候補を決めていない層には説得力を持って響く可能性がある」と語った。

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