最新記事
クジラ

「体が大きく曲がったクジラを目撃した!」──スペイン

2023年3月30日(木)19時00分
松岡由希子

体が大きく曲がった長さ17メートル、体重40トンのナガスクジラが見つかった...... Oceanogràfic Valencia Oficial-Youtube

<スペイン東部バレンシア州のクリェラ沖で、体が大きく曲がった長さ17メートル、体重40トンのナガスクジラが見つかった......>

2023年3月4日、スペイン東部バレンシア州のクリェラ沖で、体が大きく曲がった長さ17メートル、体重40トンのナガスクジラが見つかった。遠方からその姿を発見した地元の船の船長が「流し網に絡まったとみられるナガスクジラを目撃した」と通報し、オセアノグラフィック水族館の専門チームと治安警備隊が救助に向かった。

脊椎側弯症はクジラでは珍しい

オセアノグラフィック水族館の生物学者と獣医師がこのナガスクジラを観察したところ、流し網には絡まれていなかったものの、脊椎側弯症で背骨が大きく曲がり、解剖学的構造がすっかり変わっていた。ドローンの映像では、体の半分くらいまで背骨が鋭く曲がっていることが確認できる。数時間後、このナガスクジラは海岸から離れ、沖へ向かって泳いでいった。

脊椎側弯症はヒトを含むあらゆる哺乳類で発症する可能性があるが、クジラでは珍しい。2019年7月8日にはオランダ北部の離島テセルの海岸に脊椎側弯症のミンククジラが打ち上げられ、蘭ユトレヒト大学らの研究チームが剖検と画像分析を行った。

二足歩行するヒトの脊椎は比較的曲がりやすいが......

2021年3月30日に学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」で発表された研究成果では、クジラとヒトの脊椎側弯症で共通する力学的基礎があると示唆されている。ただし、二足歩行するヒトの脊椎は回転安定性を低下させているため、突発性側弯症のように、明らかな原因がなくても背骨が比較的曲がりやすい一方、クジラはヒトの直立した脊椎よりも曲がりにくい。

クリュラ沖で見つかったナガスクジラが脊椎側弯症を発症した原因は不明だ。脊椎側弯症のためにスムーズに遊泳することが困難であることから、オセアノグラフィック水族館は「いったんは沖へ向かったものの、再び海岸近くに現れるかもしれない」とコメントしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中