最新記事

ロシア

クレムリンはプーチンの後継者探しを始めている──プーチン抜きで

Kremlin Already Searching for Putin's Replacement: Intelligence Official

2023年3月20日(月)15時24分
アンドリュー・スタントン

ロシア大統領の椅子はいつまで? Sputnik/Mikhail Metzel/REUTERS

<ウクライナ侵攻の泥沼化で、ロシア国内のプーチン人気もじわじわ低下。すでに後継者探しの動きも見えてきた>

ウクライナの情報機関関係者によると、ウクライナ戦争への不満がロシア国内でも高まる中、ロシア政府はウラジーミル・プーチン大統領の後継者を探しているという。

プーチン大統領は2022年2月24日に、ウクライナに対する「特別軍事作戦」を開始。当時、ウクライナの軍事力は格段に劣ると認識されていたため、迅速な勝利を目指していた。だが西側の軍事援助によって強化されたウクライナの防衛力は予想をはるかに超え、ロシアの軍事的優位性はあやうくなった。

戦闘開始から1年以上経ったが、ロシアの侵攻は停滞を続けている。ウクライナは昨秋、ロシアに占領されていた数千平方キロの領土を奪還した。戦闘は依然としてウクライナ最東部に集中しており、バフムトの支配を狙うロシアの攻勢もここ数日は鈍化している。

ロシアの国民はこの戦争中、ほぼずっとプーチンを支持してきた。だが、損失が拡大し、ロシア軍が16万人以上の死者を出す中で、一部の人々が戦争にうんざりしている気配もある。

だからこそ、ロシア政府はプーチンの後継者を探していると、ウクライナは考えている。

害をもたらす存在に

ウクライナ軍事情報総局のアンドリー・ユーソフ報道官は最近、後継者探しが行われているのは、「プーチンを囲む人の輪がどんどん小さくなっている」からだ、と語った。ユーソフによれば、プーチンはロシア国内でさえ「ますます害をもたらす存在」になっている。

「ロシア政府内部では、起きていることへの不満がますます高まっている」と、ユーソフは言う。「将来の見通しは暗くなるばかりだ。具体的に言うと、プーチン政権は地政学的に破滅的な状況を迎えるだろう。したがって、プーチンの後釜探しはすでに始まっている」

さらに、プーチンは最終的な後継者の選定にはもはや関与していないと付け加えた。ユーソフの発言は、17日に初めてツイッターに投稿され、ウクライナのアントン・ゲラシェンコ内相顧問が翻訳した。ユーソフは、プーチンの後継者候補の名前は挙げていない。

ロシアはユーソフの発言について公式にコメントしておらず、プーチンの更迭でロシア軍内部の問題が解決されるかどうかもわからない。プーチンに批判的な人々のなかには、プーチンが今回の侵攻を「戦争」ではなく「特別軍事作戦」に分類し、軍が完全な動員を開始するための権限を制限したことを批判する声もある。

だが専門家は、ウクライナ侵攻がうまくいかない原因は、他にもあると指摘している。特に冷え込む冬の間に、意欲のある兵士を確保するという難題や、軍のリーダーシップの問題などだ。

プーチンの未来が暗いものに見えるのは、国際刑事裁判所(ICC)が17日にウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑の容疑でプーチンの逮捕状を発行したからでもある。プーチンが実際に逮捕される可能性は低い。だが、ほとんどの国がICCの主権を認めているため、この逮捕状によってプーチンの海外渡航は大幅に制限されるだろう。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中