最新記事
動物

「本物と見分けられない」インドの寺に「象ロボット」登場...背景には残酷な現実が

2023年3月10日(金)17時50分
アテナ・チャン
インドの寺院で飼育されるゾウ

写真はイメージです Mazur Travel-Shutterstock

<南部ケララ州の寺院で飼育されるゾウは、儀式や芸の訓練のため虐待などの過酷な状況に置かれることが多く問題視されている>

インド南部ケララ州にある寺院に、見た目だけでなく動きまで本物にそっくりなゾウのロボットが登場し、大きな注目を集めている。インドには儀式にゾウを使う寺院がいくつも存在するが、その現場ではゾウが酷使されたり虐待されたりするケースが多く、動物保護の観点から批判の声も高まっている。

■【動画】動きも超リアル! インド南部ケララ州の寺院に登場したロボットゾウ

本物のゾウの代わりにロボットのゾウを導入したのは、イリンジャダッピリー・スリ・クリシュナ寺。ゾウに豪華な衣装をまとわせて行う大掛かりな行事で有名なこの寺院が最近、本物そっくりなロボットゾウの「イリンヤダッピリー・ラマン」をお披露目した。

PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)インドが共有した動画には、本物と同じサイズのロボットゾウが、本物のゾウさながらに耳をパタパタと動かす様子が映っている。ロボットゾウは、口や尾、鼻なども動かすことができる。

イリンヤダッピリー・ラマンを生み出した開発チームのメンバーであるプラサンス・プラカーシャンは、「我々が開発したロボットゾウには5つのモーターが内蔵されており、自動で耳や尾、頭や口を動かすことができる。胴体の制御は手動で行われる」と述べた。

飼育ゾウは訓練のために厳しい罰を受けることも

ロボットゾウの導入は、同寺院が今後、生きているゾウを儀式に使わないと宣言したことを受けて、PETAインドが寄贈したものだ。ロボットゾウの導入に対しては、映画俳優のパールバティー・ティルボトゥから活動家に至るまでの幅広い人々から、動物を虐待することなく儀式を行う取り組みだとして称賛の声が寄せられている。

ゾウはケララ州の文化にとって重要な存在で、インド国内で捕獲されたゾウの5分の1が同州で飼育されているという。著名な寺院には、独自にゾウを飼育しているところが多く、まるで人間の有名人のようにそれぞれのファンまで存在している。

しかしゾウの飼育や儀式での使用には、賛否両論がある。PETAインドによれば、捕獲されたゾウは家族や元の生息環境から引き離され、最終的には鎖につながれて一生を過ごすことになる。捕獲されなければ経験していたはずの自然な生活からは程遠い生活を強いられ、儀式や芸などの訓練のために「厳しい罰」を与えられることも多い。

PETAインドは「捕獲・飼育されているストレスから、ゾウは異常行動を取るようになる」と指摘し、さらにこう続けた。「ストレスがピークに達して耐えられなくなると逃げようとして暴れ、人間をはじめとする動物や建物などに危害を加えることも多い」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ

ビジネス

アングル:中国のロボタクシー企業、こぞって中東に進

ワールド

トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税50%に引き上げ表明 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 7
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 8
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 9
    第三次大戦はもう始まっている...「死の4人組」と「…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中