最新記事

中国共産党

習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道

CHINESE ECONOMY

2023年2月16日(木)17時27分
ティー・クオ、チョンカン・シュイ

党=国家は膨大な債務を積み上げてインフラ整備を推し進め、少なくとも当面は高い経済成長を実現した。しかし、投資のほとんどは非効率で、中国は過剰借り入れと過剰設備の悪循環に陥った。さらに問題なのは、借金に頼った巨額の公共投資が民間部門を素通りしたことだ。

一方、土地の国有制と銀行の国家独占は、直接・間接的にGDPの約3分の1を占める不動産部門に深刻な問題を引き起こした。98年に始まった不動産の「市場化」は、国有地を地方政府の収入源に変えるのが狙いだった。この年の土地管理法改正の柱は、地方政府を管轄域内で唯一の土地所有者とすることにあった。

しかし、地方政府は土地から得られる利益を最大化するため、不動産の供給を絞って価格つり上げに走った。その結果、中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ。

全体主義への回帰が鮮明に

土地と銀行の国家独占は金融・財政システムも不安定化させた。地方政府が土地を担保に国有銀行から巨額の借り入れを続けたこともあり、中国全体の対GDP比債務残高は19年第1四半期には300%に達した。

さらに深刻なのは、その大半が土地や金融商品を担保にした住宅ローンであることだ。経済が減速している今、景気の波を増幅させる効果があるこの種の債務の担保価値低下は経済システム全体の重荷になり始め、金融・財政危機を誘発しかねない。

こうした問題に拍車をかけているのが内需の弱さだ。かつての中国は輸出収入でそれを補えたが、先進国との関係が悪化している現在、輸出頼みの経済成長はもはや望めない。中国の民間消費の対GDP比は21年の時点で38.5%(アメリカは70%近く、日本は58%)。依然として世界最低レベルにとどまっている。

中国経済が新たに直面している最大の問題は、共産党の掲げる目標の変化だ。党の存続のための経済発展という従来の目標は、穏やかな政治の進化とカラー革命(民主化運動)の阻止に代わった。党指導部は12年以降、組織的に中国の政治経済を全体主義に引き戻そうとしている。

中国社会の多元主義的要素(民間企業、市民団体、独立系メディア)は依然として制限されているが、党指導部はこの狭い空間が反抗の拠点になることを恐れている。民間の大物起業家や非国有の大手IT企業は容赦なく弾圧された。こうした動きは民間部門を弱体化させ、先進国市場へのアクセスを低下させている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド通貨ルピーが史上最安値更新、1ドル90ルピー

ワールド

フィリピン中銀、成長鈍化で12月利下げ可能性高まる

ビジネス

物言う投資家ジャクソン氏、暗号資産トレジャリー企業

ワールド

ロシア経済、ルーブル高に適応必要 輸出企業に逆風=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中