最新記事

ウクライナ情勢

「昔のソビエト赤軍と変わらない...」さすがに「30万人」は大げさでもロシア軍を侮れない理由

The Coming Fight in the East

2023年2月14日(火)14時21分
エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)、ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)
ウクライナ軍

2023年2月5日、ウクライナ・ドネツク州のバフムート付近で、ウクライナ軍がドイツの「パンツァーハウビッツェ2000」を発射 Marko Djurica-REUTERS

<訓練も装備も劣るが、どんなに激しい砲火を浴びてもじわじわ前進し、ひたすら人海戦術で粘り勝ちを狙う。ロシアの狙いは、西側の兵器が到着前に占領地を拡大すること>

いよいよロシアの熊が押し寄せてきた。既に数十万の大軍がウクライナ東部のドンバス地方に集結している。圧倒的な砲弾の数と人海戦術で、ウクライナ側の防衛網を突破する構えだ。

前線では戦闘が激化している。昨年2月24日の侵攻開始から1年、大方の予想どおり、ロシア軍は今度こそ総力で東部を攻めてくるようだ。

「あの国の東部では何かが始まっている」と言ったのはエストニア外務省のヨナタン・フセビオブ次官。「とんでもない数のロシア兵が、前線に集まっている」

昨年9月に事実上の総動員が始まって以来、既にウクライナ領内に30万を超えるロシア兵が送り込まれたと、ウクライナ当局は見積もっている。

さすがに「30万」は大げさだとしても、1年前の侵攻開始時点より多く、しかも(あえて首都キーウ〔キエフ〕を狙わず)東部戦線に戦力を集中しているのは間違いない。

「10日以内に、(ロシア軍の)新たな大規模侵攻が始まるだろう」

ウクライナ軍の当局者は匿名を条件に、そう語った。ちなみにウクライナ国防相のオレクシー・レズニコフ(当時)も、侵攻開始1年の節目に総攻撃が始まるとの見通しを示していた。

キーウの制圧を狙った初期の作戦で、ロシア軍は大きな損失を出した。そこでロシア政府は昨秋、「部分的動員令」を発して約30万の新兵をかき集めた。徴兵を嫌って国外へ脱出する人もいた。まともに新兵を訓練する時間もなかった。それでも銃を持たせ、ともかく前線へ送り込んだ。

それでどうにか、ウクライナ側の反転攻勢を食い止めた。ただしロシア側も壊滅的な打撃を被った。欧米の軍事筋による推定ではロシア軍の死傷者は20万人に迫っていると、米ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ロシア追加動員計画せず、国防相「今年33.5万人が

ビジネス

英中銀、保険会社への新たなストレステストを25年に

ワールド

ノーベル物理学賞にアゴスティーニ氏ら3氏、「アト秒

ビジネス

世銀、スリランカの成長率予想を上方修正 24年は+

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:2023年の大谷翔平

特集:2023年の大谷翔平

2023年10月10日/2023年10月17日号(10/ 3発売)

WBCは劇的優勝、ケガで無念の離脱、そして日本人初本塁打王へ。激動の大谷イヤーを現地発の記事と写真で振り返る

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 2

    メドベージェフが発した核より現実的で恐しい戦線拡大の脅し

  • 3

    複数のドローンがロシア西部「ミサイル工場」を攻撃、その閃光と爆音を捉えた映像

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 6

    新型コロナ「万能ワクチン」が開発される 将来の変…

  • 7

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 8

    台湾初「国産潜水艦」がついに進水...中国への抑止力…

  • 9

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオ…

  • 10

    「普通の男子高校生の方がうまい」 大学アメフトの試…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 3

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 4

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 5

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオ…

  • 6

    エリザベス女王も大絶賛した、キャサリン妃の「美髪…

  • 7

    ワグネル傭兵が搭乗か? マリの空港で大型輸送機が…

  • 8

    NATO加盟を断念すれば領土はウクライナに返す──ロシ…

  • 9

    ロシア黒海艦隊、ウクライナ無人艇の攻撃で相次ぐ被…

  • 10

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 3

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 4

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・ト…

  • 5

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 6

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 7

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部…

  • 8

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中