最新記事

地政学

中国を追うアメリカ、さらに日本も参戦...再び動き出した「アフリカ争奪戦」と「再分割」

AN AFRICAN AGENDA

2023年1月6日(金)17時38分
ハワード・フレンチ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

230110p40_AFR_02.jpg

アフリカ諸国との首脳会議を開いても中央にはアメリカの大統領(ワシントンDC、12月15日) KEN CEDENOーREUTERS

しかしアメリカ側には、これに気付かない人がいる。例えば上院外交委員会のジェームズ・リッシュ議員(共和党)だ。彼は会場内でザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領と面談した後、こうツイートしている。

「ヒチレマさんはアフリカにおける民主主義の強力なリーダーであり、希望の星だ。この人はザンビアにおける中国の悪質で略奪的な影響力をそぐために奮闘する一方、アメリカとの協力関係を深めようとしている。この先の継続的なパートナーシップに期待したい」

アフリカで影響力を築き、ライバルの影響力をそぎたいと考えるアメリカが標的とする国は、中国だけではない。今回の首脳会議開催中、ウォールストリート・ジャーナル紙はロシアのアフリカ大陸進出に関する長大な特集を組み、アメリカはアフリカにおける影響力を回復する必要があるとした。アメリカ政府の主張をなぞったような論調だ。

こうした考え方にはいくつもの問題がある。そもそもアメリカの外交政策の優先順位において、アフリカはほとんど常に、最下位に置かれてきた。なのになぜ、今になってアフリカ大陸での影響力を強化しなければならないのか。この基本的な問いに対する明確な答えがない。

首脳会議でバイデン政権が表明した方針は、一般論としては正しいだろう。しかし、それが具体的な行動に結び付いているとは思えない。アフリカの民主主義を支援し、具体的な政策を打ち出し、民間部門の積極的な関与を促す。そうしたことにつながっていない。

アメリカの真意が分からない限り、アフリカの人たちはこう考えるしかない。そこに大陸があり、そこで他国が影響力を増しているから、慌てて手を挙げ、新たな「分割」に加わるつもりだなと。

むろん、21世紀のアフリカ争奪戦が19世紀のそれと同じ結果(大陸全体の植民地化)に至るとは思えない。しかし、それが深刻な害悪をもたらす可能性は否定できない。

電気自動車や携帯電話に使う希少金属から原発用のウランまでの戦略的鉱物資源を他国に先んじて確保したいとか、台湾やウクライナの問題などでアフリカ勢を味方に付けたいとか、そういう思惑だけで動くなら、アフリカの国々を引き続き従属的な地位にとどめることになってしまう。

では、どうすれば過去のパターンから脱却できるか。答えの一部はアフリカ自身が出すしかない。だがアフリカでの影響力拡大を急ぐ大国の側も、その思考回路を大転換させる必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-トランプ大統領、金利据え置いたパウエルFRB

ワールド

キーウ空爆で8人死亡、88人負傷 子どもの負傷一晩

ビジネス

再送関税妥結評価も見極め継続、日銀総裁「政策後手に

ワールド

ミャンマー、非常事態宣言解除 体制変更も軍政トップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中