最新記事

遺跡

何とも言えない味わい深さ──新たに発見された「ナスカの地上絵」の「完成度」

2022年12月22日(木)18時31分
ウルジャ・カルヤニ
ナスカの地上絵「ハチドリ」

pxhidalgo-iStock

<山形大学研究グループなどの調査により、「ナスカの地上絵」が新たに168点発見された。有名な「ハチドリ」とは、大きさも絵柄もずいぶん違う姿>

南米ペルーの「ナスカの地上絵」をめぐる謎は、尽きることがないようだ。最近の研究で、ナスカ台地とナスカ市街地付近で新たに168点の地上絵が発見された。発見したのは、ペルーの考古学者らと日本の山形大学の研究グループ。ペルー南部の太平洋沿岸地帯で撮影した航空写真とドローン画像を駆使して、調査を行った。

■【写真】「ハチドリ」とはずいぶん趣が違う、妙にかわいい「ナスカの地上絵」たち

山形大学が発表した声明によれば、新たに発見された地上絵は、平均1.8~5.8メートルの大きさで、ネコなヘビ、シャチやアルパカが描かれていた。ニュースサイト「ビジネスインサイダー」によれば、研究グループはこれらの地上絵について、約2100年前から1700年前に描かれたものだと推定している。

過去に発見された地上絵は最大で約365メートルと大きく、上空からしか認識できなかった。それとは対照的に、今回発見された地上絵は地上からでも見える小規模なものだ。

山形大学は声明の中で、「この地区(ナスカ市街地の近くのアハ地区)では、2014年と2015年に山形大学によって計41点の地上絵の存在が公表されており、これらを保護するためにペルー文化省と共同で、2017年に遺跡公園が設立された」と述べ、さらにこう続けた。「今回の発見によって、この遺跡公園には合計で77点もの地上絵が集中していることが判明した」

破壊の危機にさらされている地上絵

2000年前に描かれたナスカの地上絵が最初に発見されたのは1926年。それ以降、多くの研究者がその謎に挑み続けている。

山形大学は声明の中で、「これらの地上絵は、地表に広がる黒い石を除去して、下に広がる白い砂の面を露出することによって制作されたもの」だと述べている。黒い石がどのようにして除去されたのかは、依然として謎のままだ。

多くの地上絵は上空からしか認識できないため、限られた技術しかなかった古代の人々がどのようにしてこれらの地上絵を描くことができたのかについてはいまだ謎が多く、「宇宙人が描いたもの」という説を信じている人々もいる。山形大学は声明の中で、「今回の研究成果は、ナスカ地上絵の保護活動に利用する」とも述べている。

研究グループを率いた山形大学の坂井正人教授はロイター通信に対して、「一部の地上絵は、遺跡公園内で行われている鉱山関連施設の開発作業が拡大されていることで、破壊の危機にさらされている」と述べた。

ナスカ地上絵の鳥を鳥類学の観点から考察した別の研究では、これらの絵が描かれた理由について、幾つかのヒントを発見した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、前日安からの自律反発

ワールド

豪中銀総裁補、根強いインフレ警戒 データ注視を強調

ワールド

米政府閉鎖は空の旅の危機、人員不足でリスク増大=管

ワールド

米上院、つなぎ予算案また否決 トランプ氏は民主党政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 7
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 8
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中