最新記事

中国経済

中国は「GDPアメリカ超え」を諦め、ゼロコロナを突き進む

XI MISSES THE MARK

2022年11月23日(水)11時40分
ジョン・フェン(本誌記者)

221129p18_CKZ_03.jpg

南京の鉄道駅貨物置き場に集合したコンテナ CFOTO-FUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

迫り来る「中所得国の罠」

ころが2010年に1度の国勢調査で、出生率の低下と労働人口の縮小傾向が明らかになった。

こうなると、経済成長で豊かになる前に国民の高齢化が進んでしまう、いわゆる「中所得国の罠」に陥りかねない。もちろん、それだけは避けたい。

いま中国の人口は14億を超えて世界一だが、今年の出生数は1950年代以降で最も少なかった昨年の1062万人をさらに下回る見通しだ。

また労働年齢人口についても、2020年代の半ばには2014年のピーク時に比べて3500万人ほど減少する見込みとされる。そうなったら深刻な人口の危機で、このままだと中国の生産力は中長期的に押し下げられることになる。

習も党大会の政治報告でこの問題に触れ、中国政府は「出生率を支え、出産や子育て、教育にかかる費用を軽減する政策体系を確立し、人口発展戦略を最適化させていく」と述べている。

中国政府は1979年から厳格な「一人っ子政策」を採用してきたが、2015年末に廃止し、2人目までを容認した。その6年後の2021年5月には3人目も容認する方針に転じたが、わずか2カ月後には全ての産児制限を撤廃した。

そして出産を奨励するため、新たに育児家庭に対する税額控除や住宅助成金などの支給も開始している。

また習は国内統治について中央政府に権限を集中させる政策が目立ち、大きいだけの国有企業を優遇する一方で、民間企業の成長を阻害しているとの指摘がある。

ここ数年は、習のこだわる「ダイナミックなゼロコロナ政策」が民間の中小企業を苦しめ、その生産性を押し下げ、多くの倒産や若年層の失業率悪化を招いているとの批判もある。

「ゼロコロナ」の縛りのために、党大会の始まる1週間前からは中国各地で約2億人が、何らかの行動制限を課されていた。町全体、あるいは地域を限定したロックダウンが実施され、国内外の旅行者に対する強制隔離措置も継続された。

香港では9月に、新型コロナ関連の規制が緩和された。今は香港政庁も中央政府の言いなりだから、香港で規制緩和が始まったなら本土の各地でも規制が緩和されるのではないかという淡い期待も浮上したが、そうはならなかった。

何しろ、「ゼロコロナ」には習のメンツが懸かっている。だから新規感染をゼロに抑えるという政策には完全な成功が求められ、妥協の余地はない。つまり、この政策は今後も続く。そのことは、習も政治報告で明確にしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月PPI、前年比2.7%上昇 エネルギー商品高

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る EV駆け込

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中