飼い主の声のみに反応するという研究結果──猫語を理解できる日も近い?
Your Cat Is Not Antisocial
猫が関心を持つのは飼い主が自分に呼び掛ける声だけ CHIE HIDAKA/ISTOCK
<猫はなじみのある飼い主の声だけを認識し、反応しているという研究結果が学術誌で発表された。あなたの言葉をニャンと理解していたのだ>
猫を飼っている人たちがずっと知りたかったこと――それは、猫が飼い主の声を認識し、言葉を理解しているのかということだ。
その問いにある程度答えてくれそうなのが、学術誌「動物認知」にこのほど発表された研究だ。この論文によれば、飼い主が自分に呼び掛けている声を聞くと猫の行動に変化が見られたが、飼い主が他の人に呼び掛けた声を聞いても反応しないことが分かったという。
飼い主ではなく全く知らない人に呼び掛けられた場合も、猫の行動に変化はなかった。つまり猫は飼い主の声を認識し、それに反応していると考えられる。しかも、たとえ飼い主の声であっても、自分に向けて話し掛けられた場合しか関心を持たないらしい。
「猫は人間の話すことを理解していると言っていいと思う。発言がもたらし得る結果だけでなく、なじみのある声であるかどうかや、そのことがどういう意味を持つかなども理解の材料にしている」と、ネコ科動物の行動の専門家アニータ・ケルシーは言う。
「言葉やその意味を、人間と同じようなやり方でしっかり理解しているというのではなく、言葉とそこから起きることの関係を通して理解しているのだと思う」
今回の研究では、16匹の猫を対象に、飼い主や見知らぬ人が自分に呼び掛けている声や、他の人に呼び掛けている声の録音を聞かせた。そして声を聞かせたときの猫の行動の変化(耳を動かす、瞳孔が開く、尻尾を動かすなど)を観察した。
1回目の実験ではまず、見知らぬ人が自分の名前を呼ぶ声を聞かせ、続いて飼い主が名前を呼ぶ声を聞かせた。
2回目の実験では、飼い主が自分に呼び掛ける声を聞かせ、次に飼い主が他の人に呼び掛ける声を聞かせた。どちらの場合も、猫が反応を示したのは飼い主が自分に呼び掛けたときだけだった。
猫語をAIで同時通訳?
この研究はサンプル数こそ16匹と少ないものの、猫が飼い主と強い絆を結ぶことができるという新たな証拠と言っていいだろう。猫は社会性に欠ける動物だと言われることも多いが、ケルシーによれば、この説には根拠がない。