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宗教

「地獄に落ちる」と脅され続けた──宗教2世1131名に聞いた、心理的虐待の実情

2022年11月25日(金)19時00分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)


●受験勉強が捗らないのは徳が低いから、家が貧しいのは家族の徳が足りない、弟が軽い知的障害があるのは祖母が入信しないから。

●障害を持っている方の事を、過去世に行者を迫害したり悪い事をしたせいで、そのように生まれたと言っていた。

●障害者が生まれる家系は先祖の悪い因縁があって、宗教の教えを学んで、それを断ち切らないといけないと母が信者の友人から聞いて、私はそれをずっと信じて苦しんできた。私が先祖の代わりに神に謝罪しないといけないと思ったり、私は前世で悪い事をしたんだと思うようになってとても苦しんできた。

●小学校の頃、同級生に吃音の子がいて、その子の親が元信者だったそうで、「信仰を捨てたからその子が吃音になったんだ」という事を自分の親が言っていたのを今でも覚えている。

こうした価値観を植え付けられた2世が、その後の人生の中で、価値観の「残響」に苦しみ続けるという声が多くあった。与えられた恐怖へのトラウマなどはもちろんのこと、与えられ続けた「信念」が、そのまま残り続けていることとの葛藤を味わうこともしばしばだ。

こうした当事者の声を踏まえると、虐待防止の議論は、予防や介入の手段を増やすことに加えて、「その後のケア」も必要であると分かる。サバイブした2世が、心理療法や自助グループに繋がりやすい社会。あるいは、社会適応を妨げるような教義を埋め込まれた2世などに、定着支援を行えるような試み。

無論これらの整備は、宗教的虐待に限らず、虐待対応全般としての課題でもあった。「児童虐待防止推進月間」において行政は、ただ国民らに対する啓発を行うだけでなく、法律や財源など、何が不足しているのかの洗い出しを徹底してほしい。

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2023年6月13日号(6月6日発売)は「最新予測 米大統領選」特集。トランプ、デサンティス、ペンス……名乗りを上げる共和党候補。超高齢の現職バイデンは2024年に勝てるのか?

医療

高知県民は静岡県民の2倍入院費を払っている 「不必要な医療」が日本の医療費を高騰させる

2022年12月10日(土)11時20分
森田洋之(医師/南日本ヘルスリサーチラボ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載
ベッドに横たわる男性と点滴装置

ponsulak - iStockphoto


日本の医療費を減らすにはどうすればいいのか。医師の森田洋之さんは「日本では病床を埋めるために患者が作られており、医療費高騰の原因となっている。しかも、医療の本質がゆがめられたことで、もはや健康な人の増加を喜べない体質になっている」という――。

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教育

iPhoneが高すぎて買えない日本、30年でなぜこれほど貧しくなったのか?

2022年12月10日(土)09時01分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
iPhone

grinvalds-iStock.

<「iPhoneが高い」「失われた30年」「日本の終身雇用」。この3つの共通点とは? 自分の目でニュースを見る力を養うためには、どのように「考える力」を身に着ければいいのか>

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BOOKS

「公園で毎日おばあさんが犬としていた」40年前の証言

2022年12月9日(金)18時10分
印南敦史(作家、書評家)
公園

zu-kuni-iStock.

<「池袋=変態」と決めつける書き方はどうかと思うが、普通とは何かを考えさせられる一冊『ルポ池袋 アンダーワールド』>

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宗教2世

「病院に行かせてくれない」「祈れば治ると言われる」──宗教2世が体験した医療ネグレクトの数々

2022年12月9日(金)11時50分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)

(写真はイメージです) Lemon_tm-iStock

<荻上チキ氏が代表を務める「社会調査支援機構チキラボ」が宗教2世1131名を対象に行った実態調査には、教義のために医療行為を受けられなかったり、怪我や病気を信仰不足のせいにされるといった体験談が数多く寄せられた>

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年末年始に注意したい空き巣被害と、犯人が侵入を諦める住宅の特徴

2022年12月7日(水)16時40分
侵入窃盗

(写真はイメージです) bee32-iStock

<「正しい知識があれば、確実に防げる」と犯罪学者の小宮信夫氏は述べる。侵入をはじめ犯罪被害に遭いやすい住宅の特徴とは>

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