最新記事

宗教

「脱会届けを受理してくれない」──宗教2世が答えた、ステルス勧誘、脱会拒否、宗教的つきまといの実態とは

2022年11月23日(水)12時00分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)

ストーカー規制法の穴


●学生の頃一人暮らしをしていたのですが、その時に住んでいた地域の信者さんから連絡があり、家に来られ、会合への参加や新聞を取るように言われた。親が私の知らない間に、携帯番号や住所を教団側に教えていた。

●勝手に組織の支部内で情報を回して、同じ大学の人が突然新居に挨拶に来て迷惑だった。もう来ないでくれと言ったら来なくなった。組織内で勝手に住所を共有されたので今でも気持ち悪く思っています。

●私は家族の中で唯一、今もたった一人反対というか無関心・興味がない立場なので、非常に迷惑だ、巻き込まないでほしいと感じていましたし、終わりなき勧誘はとても重圧にストレスになっていました。とりわけ自分の頭で考えるようになってきた高校生の頃は深く絶望し、信仰を強要されることが(言葉は強くなりますが)精神的レイプだ、とすら感じていました。

●実際には、家出同然で逃げ出したのであり、手続きを経て「脱会した」わけではないため、私の個人データは残ったままだった。親は教団組織を駆使して、何度引っ越しても居所を突き止め、信者カードを住所地の組織へまわし、地域の信者が訪ねてきて会合参加や新聞購読を勧誘された。見も知らぬ人に名前や素性を知られていることに恐怖感を抱いた。まるで親も含め教団挙げてストーキングされている感覚だった。

いかがだろうか。典型的なケースは、脱会の意図を伝えたにも関わらず、教団が連絡先を保持し続けているというケース。そして時には、地域や支部をまたいで、再勧誘を繰り返すというケースがある。

家族が教団に転居先などを通達し、再勧誘を促すケースも珍しくない。また、「信者がかわるがわるやってくる」というケースも見られた。

調査への回答にもあるように、「信教の自由」に基づいた勧誘行為も、度を過ぎれば他人に対し、生活上の不自由を与えることとなる。そのことで、精神的健康を悪化させたという者も少なくなかった。

こうした事例の数々を見る限り、宗教法人に対しても、「脱会意図を明確化している人に対し、再勧誘するようけしかける行為」などを規制したり、他の法人と同様に個人情報保護を徹底するよう求めることも、必要となるのではないだろうか。

なお、現行法の「ストーカー規制法」は、「宗教的つきまとい」を想定していない。ストーカー規制法において「つきまとい」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族等に対して行うもの」とされており、「アンチ感情」「スカウト目的」などは対象外となる。

ストーカー規制法は、その要件の狭さがかねてから問題視されているが、では「宗教的つきまとい」をどうすればいいか。規制法に盛り込むか、他の法改正や新法で対応するか。これも議会で取り上げるべき重要な論点であると考える。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中