最新記事

教育

日本で子ども1人が大学まで行くといくらかかるのか

2022年11月24日(木)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
子供の教育費

子育て中の家庭にとって教育費は大きな関心事だ joey333/iStock.

<標準的なモデルで試算すると教育費はトータルで約1200万円、これが少子化の要因の1つになっていることは疑いない>

子育て中の家庭にとって、教育費は大きな関心事だ。「子を大学まで出すのに○円かかる」というレポートを見ては、多くの親が青ざめ、若い夫婦は「やはり出産は控えよう」という考えに傾く。少子化の要因の1つが、高い教育費であるのは疑い得ない。

1人の子どもが大学まで出るのにいくらかかるか。この点については、銀行や生命保険会社等の試算が無数にあるが、官庁統計でも見積もることができる。文科省の『子供の学習費調査』にて、各学年の子ども1人に対し保護者が支出した教育費(年額)の平均値が掲載されている。大学については、日本学生支援機構の『学生生活調査』に学年ごとの授業料や学校納付金等の平均額が出ている。これらを積み上げれば目的の数値が得られる。

<表1>は、幼稚園から大学までの年齢・学年別の支出平均額を掲げたものだ。大学の公立欄は、国立のデータを充てている。

data221124-chart01.jpg

公立を見ると、小学校では学年による違いはあるものの、おおよそ年間30万円と少しの費用を支出している。中学校になると40万円台になり、3年生では57万円に跳ね上がる。高校受験を控え、塾通いが増えるためだろう。

高校になると下がるが、高等学校就学支援金制度により公立高校の授業料が無償になっていることが大きい(年収910万円未満の家庭)。国立大学では、授業料や通学費等を合わせて年間60万円ほどかかる。授業料が54万円ほどなので、通学費等も合わせるとこれくらいになる。

私立になると当然、金額は高くなる。私立小学校は高額で、義務教育とはいえ授業料が徴収されることに加え、裕福な家庭が多いので、通塾や習い事等に多額の費用をかけるためとみられる。大学でも、私立の年間費用のトータルは国立の倍以上だ。

幼稚園から大学までの合計は、オール公立(大学は国立)だと796万円、オール私立だと2368万円だ。後者のコースをたどるのはごくわずかだが、多くの子どもがたどる標準的なコース(幼稚園は私立、小学校から高校は公立、大学は私立)の総額は、黄色マークの数値の合算で1173万円となる。

子ども1人大学まで出すのに、およそ1200万円。2人だと2400万円、3人だと3600万円。確かに高額で、出産しようという意向を萎えさせるのに十分だ。これは2018年度のデータで、翌年度から大学等の学費負担が緩和されているので、最近ではもう少し安くなっているだろう。国は教育費負担を軽減する政策を進め、子育てがしやすい環境を作るべきだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州、自らの利益守るため多くの手段ある=EU外相

ワールド

ゼレンスキー氏、新防空体制導入へ ロシアの大規模攻

ワールド

米最高裁が関税無効判断なら迅速に代替措置─USTR

ワールド

アフガン首都の中華料理店で爆発、7人死亡 ISが犯
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中