アングル:イラン紛争で湾岸諸国の食料安全保障に打撃、輸入依存度は80%以上
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるスーパーマーケット。3月3日撮影。REUTERS/Rula Rouhana
Sarah El Safty Maha El Dahan
[ドバイ 5日 ロイター] - イランを巡る情勢悪化が、港湾物流の安定性を脅かしている。ホルムズ海峡の海上交通は混乱しており、裕福な湾岸諸国は2008年の世界食料危機以来、最大級の食料安全保障の試練に直面している。
その際に食料価格の高騰に直面した湾岸諸国は、多額の資金を海外の農業に投資し、輸入依存を前提とした政策へとかじを切った。それまでは穀物の国内生産を増やす施策が実施されていたが、コストが高い上に過酷な気候と水不足という壁に阻まれており、計画は縮小されることになった。たとえばサウジアラビアは08年に国内の小麦生産計画の縮小を始め、今ではほぼ完全に輸入に依存している。
湾岸地域では食料の輸入依存度が80―90%に達する。現在は世界的な物流が寸断され、多くの国で領空も閉鎖されているため、価格高騰や品不足は避けられない情勢だ。
英シンクタンク、チャタムハウスのアソシエートフェローであるニール・キリアム氏は、ペルシャ湾岸のアラブ諸国でつくる湾岸協力会議(GCC)について「食料の70%以上がホルムズ海峡を経由して輸入されている。戦争が長引けば物資不足に直面することになる」と指摘した。
「GCC諸国は供給元の多様化を進め、混乱に耐えうる十分な備蓄を確保する措置を講じてきたが、それも数カ月しか持たない。このままでは、価格の上昇や納期の長期化が市場を直撃し始めるだろう」
<物流のボトルネック、ホルムズ海峡>
アナリストらは、ホルムズ海峡が一時的にでも封鎖され、航路変更を余儀なくされれば、大きな負荷がかかると警告している。
ドバイのジュベル・アリ港をはじめクウェート、バーレーン、カタール、サウジアラビアの湾岸沿いにある主要港のほとんどは、入港する船舶の大半がホルムズ海峡を通過しなければならない場所にある。
今週、イランによる攻撃がこれら多くの生命線を直撃した。域内最大のコンテナ港であるジュベル・アリ港もその1つで、数時間にわたって操業停止に追い込まれた。
「最も深刻かつ即座に現れる影響は、約5000万人の生活を支えるジュベル・アリ港の封鎖によるものだろう」。調査会社ケプラーの首席農業コモディティーアナリスト、イシャン・バヌ氏はこう述べた。
ホルファカン港、フジャイラ港など海峡封鎖のリスクが及ばない場所にあるアラブ首長国連邦(UAE)の港は、その処理能力に限りがあり、失われた機能を補うのは困難だ。
バヌ氏は「カタール、クウェート、バーレーン、イラクは事実上の内陸国となり、サウジアラビアを経由する陸路に頼らざるを得なくなる」と指摘。多額のコストを伴う「渋滞」が発生するとも話した。
<バナナや生鮮食品価格が異常な高騰>
今のところ物流の停滞は表面化していない。UAEは重要物資の戦略的備蓄が4―6カ月分あるとしており、専用ホットラインを通じて不当な値上げの通報を住民に呼びかけた。
あるスーパーマーケットの従業員は、棚には多くの商品が引き続き並んでいるものの、一部の商品は補充に時間がかかるようになっていると語った。ドバイは今週、物資の流通を維持するため、トラックの通行規制を一時的に緩和した。
2月28日にイランが湾岸への報復攻撃を開始すると、多くの人が買いだめに走り、一時的な供給の落ち込みがさらにパニックをあおった。今後起こり得る事態の「予行演習」になったとも言える。
「心理的リスクが重要だ。たとえ今は在庫が十分でも、住民がスーパーに殺到すれば、それ自体が不安を増幅させる」。チャタムハウスのキリアム氏はこう述べた。
すでに値上がりを感じている住民もいる。
3月3日、地元のフェイスブックグループにある買い物客がこう書き込んだ。「昨日から食料品が3倍の値段になった気がするのは私だけだろうか。バナナの値段まで狂っている」
バナナのように傷みやすい品物は、迂回によって輸送時間が延びると特に影響を受けやすい。輸送時間を短縮するため、空域が再開した際に空輸を利用すれば、価格はさらに跳ね上がる。
過去の危機と同様、政府による食料補助金を見込む専門家もいる。
<湾岸諸国の協力>主要な食料生産拠点へのアクセスを確保するための海外投資に加え、湾岸諸国はこの20年間、数十万トンの戦略的穀物を貯蔵できる近代的なサイロの建設も進めてきた。小麦や米、食用油など、数カ月間の保存が可能な主食の緩衝材(バッファー)となる。
UAEは16年、ホルムズ海峡の外側に位置するインド洋沿岸のフジャイラ港に約30万トンの収容能力を持つ穀物貯蔵庫を開設した。この場所が選ばれたのは、欧米との緊張が高まるたびに海峡封鎖をちらつかせてきたイランを警戒し、戦略的にホルムズ海峡を迂回するためだった。
この構想は当初、緊急時の備蓄を湾岸地域全体で共有することを想定していた。ただ国をまたぐ長距離移動や、道路・鉄道網の不備といった現実的な障害があり、結局は国内向けの施策にとどまった。他の湾岸諸国もその後、独自に貯蔵施設を建設している。
食料不足を回避するためにはGCC加盟国間の地域協力が不可欠となるが、6カ国からなるこの枠組みは、長年にわたり足並みを揃えるのに苦労してきた。
キリアム氏は「複雑な物流を管理し、イラクを含む7カ国すべてが食料を満たされるようにするには、GCC諸国間での密接な協力が必要になるだろう」と語った。
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