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ウクライナの「投降ホットライン」がロシア兵の命綱に

Thousands of Russian soldiers calling "I Want to Live" hotline to surrender

2022年10月6日(木)14時15分
ニック・モドワネック

人道的な扱いでロシア人を誘う「投降ホットライン」(写真はイメージ) EvgeniyShkolenko-iStock.

<部分動員令の混乱と不満に乗じてウクライナの情報当局がロシア人の命を救うホットラインを開設。兵士を使い捨てにするロシア軍の徴兵を逃れようとする動員兵や動員前のロシア人にとっては、これが生き残る唯一のチャンスか>

ウクライナがロシア兵向けに開設した「投降ホットライン」に、既に数千件の連絡が入っているという。

ウクライナ国防省情報総局のアンドレイ・ユソフは地元メディアのフリーダムTVに対して、ロシア兵に投降を呼びかけるこの「I Want to Live(生きたい)」プログラムは公式な計画の一環で、敵の兵士が安心して投降できるようにするためのものだと説明した。

YouTubeの翻訳によると、ユソフは「これは(降伏を表す)白旗であり、武器を放棄するという意思表示だ」と述べる。「攻撃の意図がないことを示す基本的なジェスチャーであり象徴だ」

投降したいと電話をかけてくるロシア兵の数は「数万人」にのぼるのか、とキャスターが質問すると、ユソフは、ホットラインはまだ設置したばかりだが、利用者は「かなりの数」にのぼると述べた。

ユソフはまた、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が部分動員令を発動して、何万人もの予備役を招集したことに加えて、東部ハルキウ州の大部分をウクライナ軍が奪還するのを見て、投降を希望するロシア兵が急増したとも述べた。

徴兵忌避で腕や脚を折る者も

部分動員令は波乱のスタートを切っており、ロシア国民の中には徴兵を逃れるためにわざと腕や脚を折る者もいるという。招集される男性の中には、本来招集されないはずの学生や60代の高齢者も含まれている。

またプーチンやロシア軍の幹部は部分動員令で約30万人を動員する計画だが、既に37万人を超えるロシア市民が国外に脱出したことを示唆する報道もある。

これらのロシア市民は、ジョージアやフィンランド、カザフスタンやモンゴルに逃れている。カザフスタンのマラート・アクメツァノフ内相は10月4日に発表した声明の中で、9月21日の部分動員令以降、20万人を超えるロシア市民がカザフスタンに入国したことを明らかにした。

ユソフはフリーダムTVに対し、「占領軍の一員としてウクライナに配備されている兵士だけではなく、招集を受けたばかりで、まだロシア連邦の領土にいる兵士やその親族、さらには自分も招集されるかもしれないと恐れている人々からも、ホットラインに電話がかかってくる」と述べた。「開設から数週間で、投降希望者からの連絡が2000件以上入っている」

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