最新記事

銃乱射犯

撃つのをやめたのは「もう殺す相手がいなかったから」

'Couldn't Find Anyone to Kill': Nikolas Cruz Says Why Mass Shooting Ended

2022年10月4日(火)20時01分
ゾエ・ストロゼウスキ

審理の合間に弁護士と話すパークランドの銃乱射犯クルーズ(9月1日)  Amy Beth Bennett/REUTERS 

<フロリダ州パークランドの銃乱射事件の実行犯は死刑か終身刑か、陪審が見た動画が映していたものは>

2018年に米フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件を起こしたニコラス・クルーズ被告が、2022年10月3日に法廷で再生された動画のなかでおこなった発言が話題になっている。事件同日、その凶行が終わったのは、「殺すべき相手が見つからなくなったから」にすぎないという発言だ。

クルーズとの面談の様子を撮影したこの動画は、司法精神医学者のチャールズ・スコット博士が再生したものだとインディペンデントは報じている。動画再生の目的は、現在24歳のクルーズが、反社会性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害を持ち、行為障害と詐病の履歴があるとする診断結果を裏づけることだった。この診断は、現在おこなわれているクルーズの量刑審理において、鍵を握る可能性がある。この審理により、クルーズが死刑判決を受けるか、あるいは、仮釈放の可能性がない終身刑となるかが決まる。

クルーズは2018年2月14日、マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校内で銃を乱射し、17人を殺害したほか、複数名を負傷させた。クルーズは2021年、殺人17件と殺人未遂17件について有罪を認めた。

銃乱射事件に関するクルーズの量刑を決める任務を課された陪審は、ブロワード郡裁判所で再生されたこの動画により、人の命を奪う攻撃に出る前やその最中のクルーズの心理と判断について、さらなる知見を得た。

メイヨー・クリニックによれば、反社会性パーソナリティ障害とは、「一貫して善悪に関心を示さず、他者の権利や感情を無視する精神障害」。一方、境界性パーソナリティ障害は、「自分自身と他者に関する考え方や感じ方に影響を与え、日常生活を送るうえでの問題を引き起こす」障害だという。

詐病とは、外部便益のために、身体または精神の疾患を捏造もしくは誇張することを指す。

【動画】銃乱射の被害者と加害者

「脳は実行機能を備えていた」

動画のなかで、クルーズはスコットに対し、「できるかぎり多くの人を殺したい」と思っていたことや、銃乱射に至る準備について話している。そのなかには、別の銃乱射事件について調べたことや、裏庭で射撃を練習したことも含まれている。さらに、一部の犠牲者をどのように銃殺したかについて、詳細を具体的に語っている。

インディペンデントによれば、スコットは法廷の場で、「クルーズが襲撃のさなかのことを記憶できているという事実は、彼がじゅうぶんな実行機能を備えていることを示唆している」と証言したという。スコットはさらに、クルーズには衝動的攻撃性と計画的攻撃性が見られると説明した。そのうち計画的攻撃性は、胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)というよりは、反社会性パーソナリティ障害の特徴だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中