最新記事

ロシア

モスクワ市職員の3分の1が「国外逃亡」情報...動員後の劣悪すぎる状況を恐れて

Nearly One Third of Moscow Officials Have Fled Russia

2022年10月29日(土)16時00分
イザベル・ファン・ブルーゲン

プーチンの壁画が描かれた集合住宅(モスクワ近郊のカシーラ市、2022年10月) Evgenia Novozhenina-Reuters

<ロシアで行われている「動員」の悲惨な実態──。待遇は劣悪で、準備も補給もなく前線に放り出される。これを恐れた首都の職員たちが大量脱出を起こした>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナに派遣する予備役の部分的動員を発令したことを受け、モスクワ市職員の3分の1近くが1カ月の間に国外に逃れたと、地元メディアが報じた。ロシアでは、徴兵を逃れようとする国民の「大量脱出」が起きている。

■【動画】ロシアには「イカゲーム」が実在!? 新兵が送られる兵舎の過酷すぎる状況を映した動画

地元メディア「Nestka」は、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やIT部門の専門家らが一斉に逃げ出したと、事情に詳しい関係筋の話として伝えた。

職員の多くは正式に辞職しておらず、関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語っている。

プーチンは9月21日、ウクライナでの戦闘に予備役30万人を動員すると発表。その後の2週間で、徴兵を避けるために市民37万人以上がジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなどの近隣国に逃れた。

10月中旬には、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことで、同市職員が大量に辞職していた。

ロシア人ジャーナリストのロマン・スーペルは10月14日、ロシア政府の情報筋の話として、モスクワ市政府の部局長だったアレクセイ・マルティノフ(28)の死を受け、市職員が相次ぎ辞表を提出していると、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。

マルティノフは戦闘経験がないにもかかわらず、9月23日に徴兵され、10月10日にウクライナでの戦闘中に死亡したという。

■【動画】突然動員された徴集兵が見た地獄...新兵は戦う前に死ぬ状況

政府筋はスーペルに、「大量脱出が起きている。職員がメモを残して去っている。IT技術者、広告やマーケティング、広報の担当者や、一般の公務員もだ。まさに大量脱出だ」と話している。

スーペルは「動員されたモスクワ市政府職員のアレクセイ・マルティノフが死亡したことが、昨日明らかになっている」と指摘した。

入隊から数日後に戦闘で死亡

ロシアの国営メディア放送局RTの副編集長ナターリャ・ロセバは、マルティノフは軍に入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。

「彼は若い頃、セミョノフスキー連隊に所属していた」とロセバは指摘。「彼には戦闘経験がなかった。(入隊から)数日後に前線に送られ、10月10日に英雄として死亡した」と述べた。

ラトビアに拠点を置くロシア語の独立系ニュースメディア「Meduza」によると、セミョノフスキー連隊は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当しているという。

著名なロシア人ジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャク(40)も、ロシアからリトアニアに逃れた。同国首都ビリニュスの情報機関によると、26日朝に警察当局がモスクワにあるソブチャクの自宅を強制捜査したという。

ロシア国営通信社タス通信は、ソブチャクのメディア担当者であるキリル・スハノフと共に刑事事件の容疑者として彼女を逮捕するよう、治安当局が命令を受けたと報じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米政権、デルタとアエロメヒコに業務提携解消を命令

ワールド

ネパール抗議デモ、観光シーズン最盛期直撃 予約取り

ワールド

世界のLNG需要、今後10年で50%増加=豪ウッド

ビジネス

午前の日経平均は続伸、一時初の4万5000円 米ハ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中