最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ北東部で撤退の屈辱を受けたプーチン 巻き返しは可能か?

2022年9月14日(水)16時54分
ロシアのプーチン大統領

ロシアのプーチン大統領は(写真)、ウクライナ北東部においてロシア軍が素早く部隊を退却させたことについて、まだ、公式にコメントしていない。サンクトペテルブルクで7月代表撮影(2022年 ロイター)

ロシアプーチン大統領は、ウクライナ北東部においてロシア軍が素早く部隊を退却させたことについて、まだ、公式にコメントしていない。ただ、国内のナショナリスト勢力からは、戦争の主導権を奪い返せと迫られている。

西側情報当局者の話や公開情報の分析結果が正しいとすれば、プーチン氏に事態を早急に収拾できる方法は乏しい。行使可能な手段のほとんどは、ロシア国内絡みや地政学的な側面でリスクを抱えている。

1999年に権力の座についたプーチン氏がこれまで相手にした中で最も手ごわかったのは、チェチェンや北コーカサス地方のイスラム勢力だったが、これらの軍事作戦では部隊増強という道を選んだ。

ウクライナの戦争で同氏が持つ主な選択肢は、以下の通り。

■戦線の安定化と部隊再編後に反撃
ロシアと西側の軍事専門家の意見が一致しているのは、ロシア側の立場で見ると、ロシア軍は早急に戦線を安定させてウクライナの進撃を食い止め、部隊を再編し、可能ならば反撃作戦を展開する必要があるという点だ。

しかし、西側諸国の間では、ロシアがこれまでのウクライナ軍との戦闘で多くの兵力を失い、遺棄ないし破壊された装備も多数に上る以上、果たして新たに投入する十分な地上兵力や兵器があるのか疑問視されている。

ポーランドのロチャン・コンサルティングのコンラッド・ムジカ所長は、ロシア軍のウクライナ北東部からの後退を受け「兵力は枯渇している。志願兵部隊は戦力が低下し、募兵活動によっても想定された規模の人数を届けられていない。入隊希望者が少なくなっているので、状況は悪化する一方だと思う。もし、ロシアが兵力を増やしたいなら、総動員が不可欠だ」と話す。

■国家総動員
ロシアは過去5年以内に軍務経験がある予備役兵約200万人を動員できるが、彼らを訓練して実戦配置するには時間がかかる。

大統領府は13日、「現時点で」国家総動員は議論されていないと明らかにした。

総動員はナショナリストの支持を得られるとしても、都市部で暮らす一般の成人男性には歓迎されないだろう。彼らは戦争参加に消極的と伝えられている。

政府としても総動員となればウクライナ問題に関する公式メッセージを修正し、目的を限定した「特別軍事作戦」ではなく、全面戦争と呼ぶしかなくなる。そうなると大半のロシア国民のウクライナ侵攻前の日常生活を確保するという政府の方針も、撤回しなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、9月は予想外に上昇

ワールド

「ガザは燃えている」、イスラエル軍が地上攻撃開始 

ビジネス

英雇用7カ月連続減、賃金伸び鈍化 失業率4.7%

ワールド

国連調査委、ガザのジェノサイド認定 イスラエル指導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中