最新記事

フランス

「衛星からマルサする......」富裕層の隠しプール2万ヶ所、AIで一斉摘発 フランス

2022年9月6日(火)17時15分
青葉やまと

フランス税務当局は衛星写真をAIで解析し、無申告の隠しプール2万面を発見した...... Paul Bradbury-iStock

<フランス税務当局が実験プロジェクトを展開。衛星写真を解析し、私有地内の隠しプールを見抜いた>

不正をした人々がAIに見抜かれる時代がやってきたのかもしれない。フランス税務当局は、AIを使った実験プロジェクトにおいて、無申告の隠しプール2万面を発見したと発表した。

プロジェクトは不動産の税務申告を適正化する目的で、税務当局がGoogleおよび仏コンサルのキャップジェミニ社と共同して推進している。衛星写真をAIで解析し、私有地内のプールを検出するものだ。システムはさらに、検出結果を税務当局の台帳と付き合わせ、無申告のブールをリストアップする。

昨年から国内9地域を対象とした試験導入が始まっており、合計で2万面の無申告のプールが発見された。仏ニュース専門チャンネルのフランス24は、テスト導入した9つの管区の税務署の合計で、およそ1000万ユーロ(約14億円)の追徴課税が発生したと報じている。

プールは資産価値を生じるため、フランスでは固定資産税の課税対象となる。英ガーディアンは、建築の完了から90日以内に税務署に届け出る必要があるとしている。

年間3万円弱の課税額

プライベートプールの平均的なサイズは30平方メートルほどだ。競技用プールよりははるかに小さいが、住宅の居住部分とは別に、1DKのマンションの一室に相当する広さのプールがある計算となる。このサイズのプール1面への課税額は、年間200ユーロ(約2万8000円)ほどだ。プールを設置するほどの富裕層にとってはさほどの負担ではなさそうなものだが、それでも無申告が絶えないようだ。

フランスではプライベートプールの設置が盛んだ。英BBCは、統計サイト「スタティスタ」によるデータをもとに、その数はフランス全土で約320万面にのぼると報じている。同地では数年前からプールブームが訪れ、自宅に設置する人が増えていた。コロナ以降は在宅時間が多くなり、自宅でのひとときをより快適に過ごそうとプールを導入する家庭がさらに増加している。

財務局は今後プログラムをフランス全土に展開したい計画だ。2023年にはプールへの課税だけで、およそ4000万ユーロ(約56億円)の税収増を見込んでいる。

検出精度に課題

ただし、現状はまだ精度に課題があるようだ。今年4月の時点で、ソフトウェアには30%ほどの認識誤差があることがわかっている。ソーラーパネルをプールと誤認識したり、反対に、一部が木々に覆われたプールをうまく検出できないこともあるという。

当局は今後、精度向上とあわせて、プール以外の無申告の不動産も検出できるようにしたい意向だ。既存の家屋の増築部分や、新たに建て増した別館、そしてバルコニーに設けた常設のパーゴラ(大きく張り出した庇)などを対象とできるよう機能を強化する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出許可を簡素化へ 撤廃は見送り=

ビジネス

マツダ、関税打撃で4━9月期452億円の最終赤字 

ビジネス

ドイツ輸出、9月は予想以上に増加 対米輸出が6カ月

ワールド

中国10月輸出、予想に反して-1.1% 関税重しで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中