最新記事

サイエンス

モササウルス類すら餌にする、最強の「モササウルスの新種」の化石を発見

Ancient, Violent Sea Monster Discovered Alongside Its Victims

2022年8月26日(金)18時00分
ジェス・トンプソン
タラソティタン・アトロックス

@NickLongrich/Twitter

<発見者によれば「コモドドラゴンとホホジロザメとティラノサウルスとシャチを掛け合わせたような生き物」で、海の頂点に君臨していたという>

白亜紀の海に生息していた新種の海生爬虫類の化石が、その「最後の晩餐」の跡とともにモロッコで発見された。タラソティタン・アトロックスと命名された、この巨大な海生爬虫類は「モササウルス」の一種で、巨大な隕石が地球に衝突して白亜紀が幕を閉じる少し前の、約6600万年前に生息していた。

■【写真】発見されたタラソティタン・アトロックスの化石と想像図

化石を発見した研究者たちは、8月24日発行の学術誌「Cretaceous Research」に論文を発表。この論文によれば、タラソティタンは海の食物連鎖の頂点に君臨し、体長は約12メートルに成長。さまざまな海洋生物を捕食していたとみられる。

英バース大学ミルナー進化センターの上級講師で論文の筆頭著者であるニック・ロングリッチ博士は、声明の中で「タラソティタンは素晴らしい、だが恐ろしい生物だ」と述べ、さらにこう続けた。「コモドドラゴンとホホジロザメとティラノサウルスとシャチを掛け合わせたような生き物を想像して欲しい」

モササウルスは恐竜ではなく巨大なトカゲで、現代のイグアナの遠い親戚にあたる。海の食物連鎖の頂点に君臨し、ほかのさまざまな海洋生物を捕食していた。

「彼らはさまざまなものを食べた。おそらく主に食べていたのは、魚やイカなどだ。いわゆる『臼歯』がある者もいるため、二枚貝やウニ、甲殻類やアンモナイトのようなものを食べていたと思われる。今回発見したモササウルスは、ほかの海生爬虫類を食べていた」とロングリッチは本誌に語った。

「被食者」の化石に囲まれて

今回、モロッコのフリーブカにあるウーレド・アブドゥーン盆地で発見された化石の周りには、その「餌」になったとみられる生物の化石もあった。

近くにあった大型の肉食魚、ウミガメ、長さ50センチプレシオサウルス(首長竜)の頭部、それに少なくとも3つの異なるモササウルス類の顎や頭蓋骨などの化石には、酸による損傷がみられ、歯や骨に食いちぎられた跡があった。タラソティタンがこれらの生物を食べて胃の中で消化し、骨だけを吐き出したという、研究者たちの説を裏づけるものだ。

ロングリッチは声明で「これらは状況証拠だ」と述べ、さらにこう続けた。「どの種がこれらのモササウルスを食べたのか、確実なことは言えない。だが大型の捕食者に殺されて食べられた海生爬虫類の骨が複数見つかった。そして同じ場所に、捕食者の特徴に合致する種であるタラソティタン(の化石)が見つかった。ほかの海生爬虫類を専門に捕食するモササウルス類だ。これはおそらく、偶然ではないだろう」

タラソティタンは、ティラノサウルスやトリケラトプスをはじめ、白亜紀後期に生息していた他の無数の種と同じように、6600万年前の隕石衝突の影響で絶滅したと考えられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

中国、米国産大豆を大量購入 米中首脳会談後に=関係

ワールド

アングル:世界で進むレアアース供給計画、米は中国依

ビジネス

日銀の情報発信、利上げ判断につながる変化 円安を警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中