最新記事

豪雨

韓国、観測史上最大の約450ミリの集中豪雨 半地下に住む女性など9人死亡、6人不明

2022年8月9日(火)21時34分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
大雨で自動車が動けなくなったソウル江南区の道路

8日夜、大雨で自動車が動けなくなったソウル江南区の道路 YONHAP NEWS AGENCY - REUTERS

<停滞する前線の影響でかつてない集中豪雨に見舞われた>

8日から記録的な大雨に見舞われた韓国では、ソウル首都圏を中心に9人が死亡、6人が行方不明となり、被災者はソウルだけでも400名以上となった。豪雨は9日も降り続いており、厳重な警戒が呼びかけられている。YTNなど韓国メディアが伝えた。

中央災難安全対策本部によると、今回の豪雨で9日午後3時現在、死亡8人(ソウル5人・京畿3人)、行方不明7人(ソウル4人・京畿3人・江原1人)、負傷9人(京畿)となった。

ソウル冠岳区では前日午後9時すぎ、半地下住宅に住んでいた40代の女性と妹とその10代の娘が浸水により閉じ込められ、救助要請をしたものの死亡した姿で発見された。また、銅雀区でも半地下住宅に住んでいた50代女性が浸水して死亡した状態で発見された。銅雀区ではほかに倒れた街路樹の整理作業を行っていた60代の区役所職員が切れた電線による感電で死亡した。

8日から9日午後までソウルに降った記録的大雨は、主にソウルを東西に流れる漢江の南側にあたる江南地域で集中的に降ったという。8日昼12時から9日午後5時までの29時間で、ソウル市では平均252.3ミリの雨が降ったが、これを上回ったのは、ほとんどが江南・瑞草区と隣接した地域で、特に気象庁のある銅雀区新大方洞の降水量が451.5ミリで最も多く、これは非公式ながら韓国の気象観測史上最大の降水量になるという。

まるでパニック映画のような惨状

今回の集中豪雨で一番大きな被害が出たのが高級住宅街として知られる江南地域だ。江南駅交差点では、大雨で下水がマンホールから逆流して、道路が水に浸かった。江南駅一帯は、ソウルの代表的な常習浸水地域と呼ばれる。周辺より10m以上土地が低く、周囲から降りてきた水が流れ込む地形のうえ、下水の排水能力不足等により、ひとたび大雨が降ると浸水してしまう。2010年9月と2011年7月にも集中豪雨で江南一帯が浸水する被害が発生している。

豪雨が弱まった9日午前9時になっても江南駅周辺は、まるでパニック映画のような混乱した様子だった。道路では蓋のないのマンホールから雨水が逆流し、周辺には泥水が溢れており、ゴミもあちこちに散らばっていた。歩道には割れた歩道ブロックなどが散乱して市民の通行を妨害した。バスを含めた多数の自動車が路上に放置された状態で、他の車両の進入を阻み、停電のために道路信号も止まった状態だ。

混乱しているのは道路だけではなくビルなどの建物もそうだ。江南駅周辺では出勤はしたものの、建物の内部に入れない会社員たちもいたるところで見られた。建物の電源供給が切れて停電しているため、正常な業務を行えないと、外で待機する状況だった。

このあとも西海岸から発達した雨雲が流れ込み、中部地方では局地的に1時間に50~100ミリの雨が降る見込みで、首都圏・江原・中南部の内陸・江原・中南部産地・忠清・慶尚北道・北西内陸・全羅北道北部は11日にかけて降水量が100~300ミリと予想され、特に忠清では降水量が350ミリ以上になることが予想されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

男が焼身自殺か、トランプ氏公判のNY裁判所前

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中