最新記事

ウクライナ

露メドベージェフ前大統領が公開した、「戦後のウクライナ領」地図 根拠は不明

Putin Ally's Map Shows How Ukraine Will Look After Russians Blast Through It

2022年7月29日(金)17時20分
ミーラ・スレシュ
プーチンとメドベージェフ

プーチンとメドベージェフ(2019年8月) REUTERS/Alexander Zemlyanichenko/Pool/File Photo

<メドベージェフがSNSに投稿した「戦後の地図」によれば、ウクライナはキーウ州を残してすべてロシアや周辺国に吸収されることになるという>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「忠臣」として知られる、ドミトリー・メドベージェフ前大統領が、これが「戦後のウクライナ」だとして東ヨーロッパの地図をインターネット上に投稿した。そこではウクライナのかなりの部分が、ロシア連邦に吸収されていることになっている。

■【画像】メドベージェフが投稿した「戦後のウクライナ領」地図を見る

ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」によれば、現在はロシア連邦安全保障会議の副議長を務めるメドベージェフは、7月26日にメッセージアプリ「テレグラム」の自身のアカウントに、問題の地図を投稿。地図は「西側の複数のアナリスト」によって作成されたものだと主張したが、それらのアナリストの名前は明らかにしていない。

この地図に示されているウクライナはキーウ州のみで、ドンバス地方を含む大半の地域が、ロシアの領内に入っている。東部ドンバス地方(現在は多くの地域が親ロシア派勢力の支配下にある)のほかに、ドニプロ(ドニエプル)、スーミ、ザポリージャ、ヘルソン、チェルニヒウ、クロピヴニツキー、チェルカッスイやミコライウなどの地域も、ロシアの支配下に入り、さらにオデーサ港もロシア領として示されている。

ウクライナは「地図から消える可能性」と警告

興味深いことに、ビニンツァとチェルニはルーマニアの占領地域として示されており、ウジホロドをはじめとするその他のいくつかの地域は、ポーランドとハンガリーの支配下に入っている。そしてなぜか、ロシアの忠実な盟友であり、ロシアによるウクライナへの侵攻を支持しているベラルーシには、一切の領土の「割り当て」がない。

メドベージェフは地図の投稿に先立ち、「現在展開されている出来事の結果として」、国家としてのウクライナは地図上から消えるかもしれないと警告していた。

メドベージェフはウクライナについて、2014年の政変の後は国家としての独立性を失い、西側諸国の直接の支配下に入ったと主張。ウクライナ政府は、NATOが自分たちの安全を保証してくれると考えるようになったと指摘している。さらに現在起きている戦闘の結果、ウクライナは国の主権を失い、世界地図から消える可能性があると警告した。

ソーシャルメディア上ではこの地図について、メドベージェフは「アルコールが原因の認知症」だと揶揄する声や、ロシアが「他国の土地を盗んでいる」と非難する声が上がっている。

キーウ・ポスト紙のジェイソン・ジェイ・スマート記者は、メドベージェフの地図は「ロシアの計画を予言する」ものだと指摘した。彼はさらに、ウクライナ東部の親ロシア派組織「ドネツク人民共和国」を率いるデニス・プシリンがベラルーシを訪問したことや、「キーウ、ルツクとオデーサを解放すべき時」と述べたことについてもツイートした。

プシリンはベラルーシのブレスト要塞で、第二次大戦時の戦いを称える献花式に出席し、次のように述べていた。「いま再び、ロシア人が築いたロシアの都市を解放すべき時が来ている。キーウ、チェルニヒウ、ポルタワ、オデーサ、ドニプロ、ハルキウ(ハリコフ)、ザポリージャとルツクだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身も認める「大きな胸」解放にファン歓喜 哺乳瓶で際どいショットも
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中