最新記事

アルツハイマー病

アルツハイマー病の原因はアミロイドβ、とした重要論文で画像操作の可能性が明らかに

2022年7月27日(水)18時20分
松岡由希子

アルツハイマー病の原因に関する重要論文だったが...... haydenbird-iStock

<アルツハイマー病の発症原因がアミロイドβというタンパク質が関連しているという仮説があるが、「サイエンス」は「この研究論文は画像操作され、結果が捏造されたおそれがある」と報じた......>

米ミネソタ大学(UMN)のシルヴァン・レーヌ准教授らの研究チームは、2006年3月16日付の学術雑誌「ネイチャー」で、「『アミロイドベータスター56(Aβ*56)』というオリゴマー種がアルツハイマー病に関連する認知障害に寄与している可能性がある」との研究論文を発表した。

アルツハイマー病の早期治療における有望な標的として「アミロイドベータスター56」が注目され、この研究論文はこれまでに2269本の学術論文で引用されている。

しかし学術雑誌「サイエンス」は2022年7月21日、6カ月にわたる調査の結果、「この研究論文は画像操作され、結果が捏造されたおそれがある」と報じた

また、「ネイチャー」ではこの研究論文に7月14日付で「一部の図表について疑義が指摘されている。ネイチャーは調査をすすめ、すみやかに回答する予定だ。この間、この研究論文で報告された結果を使用する際には注意するよう勧める」と追記している。

数十本の研究論文で改竄・複製された画像が確認された

この問題を告発したのは、米ヴァンタービルト大学の神経科学者マシュー・シュレーグ准教授だ。2021年8月にキャッサバ・サイエンシズ社のアルツハイマー病の実験薬「シムフィラム」を調査する弁護士から依頼を受け、この薬とその基礎となる科学に関して公開された画像を精査した。

その結果、2006年3月16日付の研究論文を含む数十本の研究論文で、明らかに改竄もしくは複製された画像が確認された。シュレーグ准教授は2022年1月、キャッサバ・サイエンシズに研究助成金を支給しているアメリカ国立衛生研究所(NIH)やネイチャーを含む出版社にこれらの疑義を伝えている。

サイエンスは、米テキサス大学サンアントニオ校のジョージ・ペリー教授や米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のジョン・フォーサイス教授ら、アルツハイマー病の一流研究者と画像アナリストにシュレーグ准教授の調査結果をレビューするよう依頼した。

その結論は概ねシュレーグ准教授と一致しており、レーヌ准教授が著者となっているち20本以上の研究論文で疑義がみつかった。そのうち10本は「アミロイドベータスター56」に関するものだ。

レーヌ准教授はまだ回答していない......

シュレーグ准教授からの指摘を受け、レーヌ准教授らの研究チームは2013年4月に発表した研究論文と2012年7月に発表した研究論文の一部の画像をこのところ相次いで差し替えている。

レーヌ准教授はサイエンスからの問い合わせに回答していない。レーヌ准教授が所属するミネソタ大学の広報担当者は「大学ではレーヌ准教授の研究に関する申立てをレビューしている」とコメントしている。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FRB議長、クック理事解任巡る最高裁の口頭弁論出席

ビジネス

カナダCPI、25年12月は2.4%上昇で予想上回

ビジネス

独企業の対米投資、25年にほぼ半減 貿易巡る不確実

ワールド

米最高裁が関税無効判断なら迅速に代替措置─USTR
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中