最新記事

ウクライナ情勢

すっかりピョートル大帝気取りのプーチンだが、この戦争に勝者はいない

How Russia Turned Its War Around

2022年6月22日(水)14時20分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
ドネツク

ロシア軍の激しい砲撃が続くドネツクで、炎上する畑を横目に去る女性 GLEB GARANICHーREUTERS

<初動で大きくつまずいたロシアだが、キーウ攻略を放棄し、東部に部隊を移動させてからは有利になりつつある。両国とも勝つつもりでいるが、現実は違う>

戦術的な失敗を何度も繰り返してきたロシア軍だが、ここへきて風向きが変わり、目指すウクライナ東部ドンバス地方の制圧に向けて一歩ずつ前進しているようだ。既に同地方北部(ルハンスク〔ルガンスク〕州)のほぼ全域を押さえた。残る主要都市セベロドネツクもほぼ包囲した。

対するウクライナ軍は毎日100~200人の兵を失い、かなり疲弊している。ロシア側も似たような状況だろうが、ウクライナ側は弾薬が尽きつつある。

ウクライナに侵攻してから4カ月、ロシア軍は今、ようやく自分たちの得意な戦争をやれるところまで来た。つまり爆弾やロケット弾、ミサイルなどの重火器を繰り出して敵を圧倒する戦い方だ。

米海軍分析センターのロシア専門家マイケル・コフマンも指摘するように、こうした砲撃戦の勝負になれば、ロシア軍のほうが有利だ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の仕掛けたウクライナ侵攻は初動で大きくつまずいた。ウクライナの現政権を短期間で転覆させ、プーチン政権に従順な指導者を新たに据えるつもりだったが、できなかった。なぜか。陸海空軍を同時に動かし、敵を北と東と南の3方向から攻める大掛かりな連携作戦は未知の領域だったからだ。

この作戦が失敗した理由は3つある。まず、ウクライナ軍の激しい反撃はロシア側の予想を超えていた。西側諸国の支援(武器の供与、情報の提供、そして政治的・経済的な支援)も想定を上回った。そして何よりも、作戦自体が無謀でロシア軍の体質的な弱点を露呈させ、自分たちの首を絞めることになった。

破壊し尽くし得るものは

ロシア軍には、複数の部門が関わる作戦を同時並行で実施する経験がほとんどなかった。にもかかわらず、プーチンは陸海空の3軍の連携を要とする作戦を立てた。しかもロシア軍は伝統的に補給面の能力が低い。しかし3方面からウクライナを攻めるには長い補給線を維持・防衛する必要があった。

また現場の将校には臨機応変に対応する能力がなく、不利な戦況を立て直すことができなかった(ここまでの戦闘でロシア軍の将官が12人も戦死しているのは、彼らがやむなく前線で指揮を執っていたからだ)。

こうして攻撃作戦は失敗した。防衛でもウクライナ軍の奇襲に対応できず、補給線を断たれた。食料も燃料も弾薬も、そしてリーダーシップも失った。

では首都キーウ(キエフ)制圧を目指した段階でロシア軍が戦術を変更し、砲撃戦に切り替えることは可能だったか。答えはノーだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ドンバス割譲が「安全の保証」の条件 ウクライナ

ビジネス

午後3時のドルは154円半ば、円高休止も上値伸びず

ワールド

対米投融資、人工ダイヤ生産事業が有力に 「第1号」

ビジネス

欧州銀行連盟、EUに規制改革要求 競争力低下を警告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中