最新記事

ロシア

高まる「タカ派」の声、プーチンが追い込まれている

PUTIN FAILS HAWKS

2022年6月16日(木)17時00分
エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)
モスクワの軍事パレード

5月9日にモスクワで行われた軍事パレードでは威勢の良かったロシア軍だが Maxim Shemetov-REUTERS

<ロシア国内では今、反体制派ではなく、退役軍人グループや軍事ブロガーが「プーチンは手ぬるい」と不満を発している>

ロシアで、ウクライナでの戦争への不満が高まっている。ただし、不満を発しているのは反体制派ではなく、タカ派の退役軍人グループや軍事ブロガーだ。

彼らは遅々とした戦況に対して膨らむいら立ちを表明し、ウラジーミル・プーチン大統領に国民総動員を要求する向きもある。

筋金入りのナショナリストたちから上がる不満の声は、プーチンが自ら招いた窮地の一端を示している。

プーチンが相手にしているのは、確実だと約束されていたはずの勝利を渇望するロシア国民と、消耗しすぎて勝利できないロシア軍だ。

英国防省情報機関が5月下旬に発表した報告書によれば、ウクライナ侵攻開始から3カ月間のロシア軍兵士らの推定死者数は、ソ連時代に9年以上にわたって続いたアフガニスタン侵攻の際の総死者数(約1万5000人)と同水準に達している。

ロシアでは独立系メディアや反政権派が表立った戦争批判を封じられ、多くの反戦デモ参加者が逮捕された。

それでも軍事ブロガーらは、不満表明の数少ない場として機能するメッセージアプリ「テレグラム」を使い、自由に情報発信している。

軍事ブロガーが示す不満はある事実を浮き彫りにする。すなわち、今回の戦争をめぐってプーチンが真の難題に直面するとしたら、それは現状を手ぬるいと考える国内タカ派が突き付けるものである、ということだ。

退役軍人団体の全ロシア将校協会は5月中旬、プーチンと政府高官らに宛てた公開書簡で、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を制圧できない状況を「失敗」と形容。ドローン(無人機)や弾薬、赤外線カメラが不足していると非難した。

書簡は民族主義的用語や陰謀論に満ち、今回の戦争を「白人・キリスト教徒の欧州」を守る戦いと表現している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中