最新記事

日本史

史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・義経の死に際し実際にやったこと

2022年6月26日(日)18時29分
濱田 浩一郎(作家) *PRESIDENT Onlineからの転載
源頼朝像

歌川国芳による源頼朝像「知勇六佳仙 右大将源頼朝卿」 CC-PD-Mark/Wikimedia Commons


源頼朝はなぜ弟・義経と決裂したのか。歴史学者の濱田浩一郎さんは「壇ノ浦合戦後の度重なる失態が原因だろう。頼朝は『弟は災いの種となる』と考えたのではないか」という――。


頼朝が壇ノ浦の戦いで求めていたこと

源義経は、壇ノ浦合戦において平家を滅亡させました。義経は平家討伐の功労者といっても良いでしょう。しかし、彼は最終的には異母兄・源頼朝に疎まれ、死の淵に追い込まれることになります。それはなぜなのでしょうか?

1185年3月24日(旧暦)、義経軍は長門国赤間関の壇ノ浦において、平家を滅亡させます。平家によって京都から連行された安徳天皇はこの時、入水し、海中に没するのです。同じく京都から持ち去られていた三種の神器の一つである宝剣も水中に沈んでしまいます。

頼朝は西国に派遣していた異母弟の源範頼(のりより)に対し、「安徳帝と三種の神器を確保するため、よく考えて戦をしなければいけない」と書状で諭しています(鎌倉時代後期の歴史書『吾妻鏡』)。ところがそのもくろみを、達することはできませんでした。

義経の度重なる失態

義経からの平家滅亡の知らせを鎌倉の頼朝が聞いたのが、4月11日のこと。翌日、頼朝は義経に捕虜を連れて上洛するよう命令を下します。

4月22日、頼朝のもとに侍所次官の梶原景時から書状が届きます。九州にいた景時は、義経の行動を非難する弾劾状とも言うべきものを主君に送ったのでした。

そこには、合戦の勝利を自分一人の手柄のように感じて奢(おご)る義経の様子が描かれていました。さらには「義経は、自分勝手に振る舞い、頼朝様の命令を守りません」(『吾妻鏡』)とも。景時からの手紙を見て、頼朝は眉をひそめたことでしょう。

義経は平宗盛や平時忠といった捕虜を連れて、西国から京都に入ります(4月26日)。上洛した義経は、朝廷より、院(後白河法皇)の親衛隊長とも言うべき、院御厩司(院の軍馬などを管理する厩(うまや)の長官)に任命されます。これには頼朝の推薦があったといわれています(平家物語で最も古い成立とされる『延慶本 平家物語』)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米国で感謝祭休暇期間のバス・鉄道利用急増、航空便の

ワールド

英国、公共サービスのサイバー攻撃対策を強化へ

ワールド

豪中銀、金融政策が制約的か議論 今後のスタンスに重

ワールド

米軍のカリブ海攻撃、国際法違反であり懸念=仏外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中