最新記事

日本史

史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・義経の死に際し実際にやったこと

2022年6月26日(日)18時29分
濱田 浩一郎(作家) *PRESIDENT Onlineからの転載

『吾妻鏡』(5月5日)には、頼朝の義経に対する怒りの理由が書かれています。それによると、義経は、壇ノ浦合戦の後、九州に進出し、関東武士の処罰などの越権行為をしていたとのこと。九州のことは、範頼(頼朝の異母弟)が差配すると頼朝が命じていたにもかかわらずです。

5月7日には、京都の義経から「謀反の意思などない」と誓う起請文(きしょうもん)が頼朝のもとに届きますが、頼朝は怒りを鎮めることはなかったといいます。同日、義経は、平宗盛ら捕虜を連れ、京都をたち、鎌倉に向かいます。

ところが、義経は相模国酒匂宿(神奈川県小田原市)で足止めされ、鎌倉入りを禁止されてしまうのです。捕虜だけが鎌倉に連行されました(5月15日)。

その後、義経は鎌倉郊外の腰越(鎌倉市)にて、無実を訴える「腰越状(こしごえじょう)」を書き、頼朝側近の大江広元に提出したといわれます。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、捕虜となった平家の総帥・平宗盛が腰越状を代わりに書いてやるシーンがありましたが、宗盛が代筆したということはありません。

腰越状は後世の創作とされている

腰越状は『吾妻鏡』だけでなく『平家物語』や『義経記』にほぼ同文のものが掲載されています。

そこには、義経は肉親の情に訴えて嘆願したものの、頼朝の怒りは収まらず、対面することは許されず、むなしく京都に帰っていったことが書かれています。

しかし、腰越状はその文体と内容に疑問が出されていて、後世の創作ではないかとする説が有力です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは148円前半で底堅い、日経最高値で

ワールド

ブラジル・中国首脳が電話会談、BRICSや二国間関

ワールド

中国当局、エヌビディア H20半導体の使用回避を国

ワールド

豪中銀、全会一致で予想通り利下げ 一段の緩和には慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中