最新記事

テクノロジー

実はアマゾンも危ない? 巨大テック企業「無敵神話」を疑え

2022年5月20日(金)17時06分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

一方で、ショッピングモールのデジタル版ともいえるのが、eコマースだ。インターネット上では、買い物客はクリックするだけで全く別の選択ができる。さらに力がある売り手であれば、競合するプラットフォーム経由や直接顧客にアプローチすることも可能だ。電子商取引のプラットフォームでは、これを防ぐことは難しいという。

著者は、実店舗を持つ事業者がeコマースに参入した場合、アマゾンのeコマース事業よりもはるかに高い利益をあげていることを指摘する。オフラインのビジネスモデルは驚くほどレジリエントなのだ。

時代に逆行するかのようにアマゾンが書店や食料雑貨店といったリアル店舗に参入したのは、ここに挑もうとしたのであろう。実際にコロナ危機の直前まで、経営不振のインターネットショッピング業者が、収益改善のためにモールの直販店の開設を考えていたというほどだ。

ただし、実店舗とeコマースの相性がいいのは、カー用品など特定の専門分野のある場合であり、そもそも顧客の囲い込みができているかが重要だ。

イーベイのようの単純に買い手と売り手をつなぐもの、キャスパーのように売り手であり生産者でもある場合、アマゾンは、そのハイブリットモデルだ。このようにeコマース企業にはさまざまなビジネスモデルがあること、なによりもどのビジネスモデルも、業績不振が長く続いていることも見逃してはいけない。

FAANGが「プラットフォームの妄想」に当てはまらないという事実

日本では「GAFA+Netflix」と呼ばれている5つの巨大IT企業が、「FAANG」としてメディアで取り上げられたのは2013年。CNBCのテレビ番組「マッド・マネー」のパーソナリティ、ジム・クレイマーによるものだった。

そのFAANGは2018年に短い停滞があったものの、2020年のパンデミックではその勢いを加速させた。

一般的に同じ業界内では同じような利益率を示し、似たような事業構造や競争構造を持つ産業であれば、同等の収益性を持つことが多い。しかし、これら5社の経営指標と財務指標は、標準から逸脱していると著者は指摘する。

アップルを除く4社の株式のうち、「S&P500」企業の収益性の平均から2社は大きく上回り、2社は大きく下回っている。後にFAANGに名を連ねたアップルは、平均を大きく上回るグループに迫る業績をあげた。

これらの企業を見るときは、それぞれの構造的な優位性と事業の多様性、複雑性を理解し、強みと弱みを際立たせていることが大切だ。

しかし、多くの企業や経営者は、自社がFAANGに加わることを夢見ては憧れ、追いかけ続けている。このことこそが、「プラットフォームの妄想」であると著者は強く警鐘を鳴らす。つまり、自ら喜んで二番煎じになろうとしている点に手厳しい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中