最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ軍が使い始めた米M777榴弾砲の威力

How American M777 Howitzers Could Turn the Tide of Ukraine War

2022年5月11日(水)16時53分
ダーラー・ロシュ

M777榴弾砲の正確性と射程の長さに、性能が向上した155ミリ口径の砲弾が加わることは、ウクライナ軍にとって大きな強みとなる可能性がある。ウクライナ軍はすでに、同国北東部にある都市ハルキウ周辺の地域を奪還しつつあると伝えられている。

砲弾とドローン

英タイムズ紙は5月9日、ウクライナ軍がすでに、M777を用いたロシア軍拠点の攻撃を開始したと報じた。ドンバス地方では、大砲やドローンをより効果的に用いた戦いを行える側が優位に立つだろうという専門家の見方も伝えている。

戦闘初期の段階でウクライナの首都キエフの攻略に失敗したロシア軍が、次に狙いを定め、戦力を集中しているのがドンバス地方だ。ウラジーミル・プーチン大統領も、5月9日に行った戦勝記念日の演説で、ドンバス地方の重要性を強調した。

ウクライナはまた、ロシア軍の進軍を妨害するためのドローンも入手している。これらのドローンは偵察に用いられ、標的を特定後、大砲で攻撃する。

戦況を一変させる武器

かつてアメリカ陸軍の陸軍野戦砲兵学校の校長を務めたこともある退役少将のブライアン・マッキーナンは、4月25日付けの「ディフェンス・ワン」記事で、榴弾砲は「ロシア側の軽装甲機動車や支援車両や大砲」への攻撃に効果的だと語っている。「ロシア軍の攻撃能力を削ぐ上で、大きな力を発揮する武器になると思う」

同様に、イギリスの王立防衛安全保障研究所(RUSI)が4月22日に発表した報告書は、ウクライナ軍の総司令官、ヴァレリー・ザルジニー大将の上席顧問をつとめる人物の発言を引用している。「対戦車ミサイルには、ロシア軍の進軍を遅らせる効果があったが、壊滅させたのは我々の大砲だ。ロシアの部隊を崩壊させたのは大砲だった」

第二次大戦中に連合国軍がオランダで実施した「マーケット・ガーデン作戦」に関する著書を持つR.G.ポウルセンは、5月10日に投稿したツイートで、M777を「戦況を一変させる兵器(ゲームチェンジャー)」と呼んだ。

アメリカ軍による訓練

アメリカ国防総省の高官は5月9日の記者会見で、「現時点で310名以上のウクライナ軍兵士が、M777に関する訓練を完了した」と発言。約束した90門のうち85門がすでにウクライナに届けられたと述べた。

「これに加えて我々は、2週間に及ぶM777のメンテナンス講座を開始した。これは新たな進展になる。ウクライナ国内に非常に多くの榴弾砲が配備されることになった以上、メンテナンスの支援も重要だ」

米国防総省のある高官は4月29日、ドンバス地方でウクライナ軍を支援することに関して、M777は「圧倒的に効果的」だと考えられていると述べた。

M777榴弾砲に加えて、別のタイプの155ミリ大砲も供与される予定だ。オランダはPzH2009自走榴弾砲を6門送っており、フランスも10〜12門のカエサル155mm自走榴弾砲を供与すると約束している。

(翻訳:ガリレオ)

※記事のタイトルと本文の一部を修正しました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府、輸送中のイラン産原油売却を容認 30日間の

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏

ワールド

イラク、外国企業運営の油田で不可抗力宣言 ホルムズ

ワールド

英、米軍による基地使用承認 ホルムズ海峡攻撃巡り 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 9
    将来のアルツハイマー病を予言する「4種の先行疾患」…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中