最新記事

韓国政治

日韓関係改善のため、韓国・尹錫悦大統領がすべき3つのこと

Toward Trilateral Trust

2022年5月16日(月)16時45分
チョ・ウニル(韓国国防研究院准研究員)

加えて、元徴用工訴訟問題が象徴した歴史をめぐる行き詰まりは近年、日本の対韓輸出規制を契機とする貿易問題や防衛問題(韓国は日韓秘密情報保護協定を破棄しようとした)に飛び火してきた。

日韓関係が悪循環に陥るなか、隣国に対する両国国民の意識はむしばまれている。

日本政府が2019年7月に韓国向けの輸出規制を強化した際には、韓国の消費者が日本製品の不買運動を開始。一方、韓国は信頼できない隣人で日本政府は正しい行動をしているとの見方が日本では一般的だった。

韓国のシンクタンク、東アジア研究院(EAI)と日本の言論NPOが20年に実施した共同世論調査では、日本に良くない印象を持っていると回答した韓国人の割合が71.6%に達した。それに対し、韓国に良くない印象を持つ日本人の割合は46.3%だった。

こうした状況が背景にあるなか、尹政権の行く手には厳しい道が待ち構えていそうだ。

それでも、日韓・日米韓の連携強化に向けた新たな取り組みとしては、少なくとも3つの手法が想定できる。

第1に、日韓関係の改善には民間に根差したボトムアップの路線が不可欠だ。根強い歴史問題はトップダウンでは解決できない。

1998年の日韓共同宣言の精神に立ち戻り、両国の社会が互いを信頼できるパートナーと認識できるよう各種の交流を再開することが極めて重要だ。国内政治を理由に、こうした交流が立ち消えになってはならない。

協力の戦略的枠組みを

第2に、外交戦略上の共通の立場を探ることが重要になる。

日本政府が掲げる外交政策「自由で開かれたインド太平洋」と「グローバル中枢国家」戦略が交わる点はあるか、尹政権は検証するべきだ。インド太平洋地域の安定促進のため、両国は協力課題を見定めなければならない。

第3に、尹政権は日米韓連携のさまざまな枠組みを考案する必要がある。

いい手本が、北朝鮮の核開発問題を受けて99年に設置された日米韓調整会合(TCOG)だ。高度に制度化されてはいなかったが、TCOGは日米韓の協調慣行を醸成する戦略的プラットフォームとして機能していた。

差し迫った軍事的脅威を解消し、北朝鮮の非核化に向けた道筋を整える上で、日米韓の連携を優先課題にするべきなのは確かだ。

とはいえ、新興技術やサプライチェーンのレジリエンス(回復力)、気候変動危機といった新たな課題への持続的対応を可能にする協力プラットフォームの形成も、同じくらい重要になる。

韓国の新政権には、戦略的な視点が求められている。

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中