最新記事

韓国政治

日韓関係改善のため、韓国・尹錫悦大統領がすべき3つのこと

Toward Trilateral Trust

2022年5月16日(月)16時45分
チョ・ウニル(韓国国防研究院准研究員)
尹錫悦の大統領就任式

国会議事堂前で開かれた大統領就任式で宣誓する尹 JEON HEON-KYUNーPOOLーREUTERS

<対日関係の行き詰まりが長引くなか、日米との連携強化を課題に掲げた新大統領。行く手には厳しい道が待ち構えていそうだが...>

韓国で5月10日、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が就任した。

その1週間前、政権移行への準備を行ってきた政権引き継ぎ委員会は110の国政課題を発表。うち18件は対北朝鮮関係、外交、国防の3分野で「グローバル中枢国家」を目指すことに焦点を当てている。

韓国では、新政権発足のたびに「継続」と「変化」を訴える課題を掲げるのが常だ。

グローバル中枢国家になるという目標の下、尹政権は対日関係の改善や日米韓3カ国の連携活性化を唱え、前政権と一線を画している。

良好な日韓関係・日米韓関係の実現に向けて、尹は既に前向きな意思表示をしている。

外相に任命された朴振(パク・ジン)は就任前の4月下旬、尹が派遣した代表団の一員として日本を訪問。それに先立ち、2015年の日韓慰安婦合意は「公式な合意だ」との見解を示した。

さらに、朴は尹の大統領就任式に出席した日本の林芳正外相と会談。「現在の国際情勢においては日韓両国、およびアメリカを交えた3カ国の戦略的連携がこれまで以上に必要だとの認識」で一致した。

日本との関係改善を強調する尹の姿勢は、米政権が重視するインド太平洋地域の連携強化にプラスの作用をもたらすと考えられる。

ジョー・バイデン米大統領は5月20~24日、自身の政権発足以来、初めて日韓を訪問する予定だ。米中の競争や米ロ対立が加速する状況で、極めて重要な意味を持つ訪問と受け止められている。

地域安全保障の観点から日米韓連携を唱えるバイデン政権は、日韓それぞれと2国間の閣僚級会合も開いている。

今年2月に発表した「インド太平洋戦略」では、行動計画実現の取り組みの柱の1つに「日米韓の連携拡大」を据えた。3国間協力体制の大幅な推進は、アメリカにとってインド太平洋全体の同盟ネットワークを強化する手段だ。

だが尹政権にとって、日本との冷え切った関係を改善し、両国間の信頼を回復するのは難しい課題になるかもしれない。

日韓関係の重要性はどちらの国民も認識しているが、外交・経済・防衛分野ではこの数年間、行き詰まり状態が続いている。

歴史問題を乗り越えて

1965年の国交正常化以来、日韓関係を阻む根本的な障壁であり続けているのが歴史解釈の相違だ。1998年の日韓共同宣言、慰安婦合意など、和解の試みが繰り返されてきたが、残念ながら両者の認識は一致しないまま。

民主化した韓国の市民社会が補償要求を強める一方で、日本の保守派エリートはそうした動きを概して無視する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

旧ソ連モルドバ、EU加盟巡り10月国民投票 大統領

ワールド

米のウクライナ支援債発行、国際法に整合的であるべき

ワールド

中ロ声明「核汚染水」との言及、事実に反し大変遺憾=

ビジネス

年内のEV購入検討する米消費者、前年から減少=調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中