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このインフレを「戦争のせい」と考えるのも、個人や企業への「補償」も間違っている理由

IS WAR DRIVING UP PRICES?

2022年4月20日(水)10時56分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

もう1つの要因は、ESG(環境・社会・企業統治)投資という考えからグリーン経済を促進するために、化石燃料の開発などへの投資を減らす動きが高まってきたことかもしれない。

価格が高い理由を理解しなければ、正しい政策対応はできない。物価高の原因が戦争であれば、消費者や企業を救済するための上限価格規制や手厚い補償をしなければならない。さらに、戦争が終われば物価が下がることが期待できる。

しかし商品価格の高騰が豚周期とESG投資による圧力の結果であれば、市場には適切なシグナルが送られていることになる。実際、ESGにとって価格上昇は「正しい」と考えられていたはずだ。この場合、経済は新たな段階の物資不足に適応する必要はあるが、消費者の購買力の低下を補償するべきではない。

おそらく豚周期、ESG、戦争という3つの要因全てがインフレの要因なのだろう。しかし侵攻前の価格動向からすると、戦争は小さな要因でしかないと考えられる。

©Project Syndicate

Column_DanielGros.jpgダニエル・グロー
DANIEL GROS
ドイツ出身の経済学者。IMFのアドバイザーなどを経て、現在はシンクタンク欧州政策研究センター研究部長。主な研究テーマはEUの経済政策で、欧州議会への助言も行う。

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