最新記事

経済制裁

岸田首相、対ロシア追加制裁発表 石炭輸入禁止は段階的に、ズベルバンク資産凍結なども

2022年4月8日(金)20時00分

岸田首相は8日夕の記者会見で、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどで民間人遺体が多数見つかったことを受けG7がロシアに追加制裁を科す方針を表明したのを受け、日本としての追加制裁策を発表した。写真は都内で2021年10月、代表撮影(2022年 ロイター)

岸田文雄首相は8日夕の記者会見で、主要7カ国(G7)が7日にロシアへの追加制裁を科す首脳声明を発表したことを踏まえ、ロシアからの石炭輸入禁止など、日本としての追加制裁策を発表した。ロシアに対する外交的・経済的な圧力を強める。

追加制裁は、1)ロシアからの石炭輸入の禁止、2)ロシアからの機械類などの輸入禁止、3)ロシアへの新規投資の禁止、4)金融制裁のさらなる強化、5)資産凍結の対象拡大──の5本柱で構成される。

ロシア産の石炭は電力やセメント、鉄鋼など様々な分野で使用されており、それぞれの分野の実態を踏まえながら代替策をみつけ、段階的に輸入を削減。輸入禁止につなげていく考え。ロシアからの機械類や一部木材、ウオッカなどの輸入も来週から禁止する。

金融制裁では、ロシア最大手銀行のズベルバンクおよびアルファバンクの資産を凍結。さらに400人近くのロシア軍関係者や議員、国有企業を含む約20の軍事関連団体を新たに資産凍結の対象とする。

首相は、ロシアのウクライナ侵略によってエネルギーや食料の価格が高騰していることに触れ、「非道な侵略を終わらせ、平和秩序を守るための正念場だ」と強調。国民に対し、理解と協力を求めた。

ウクライナの民間人殺害など「ロシアは重大な国際人道法違反を繰り返してきた」として、国際刑事裁判所(ICC)の捜査や国連の調査を支持する考えを示し、ICCへの分担金支払いを前倒しで実施することも明らかにした。

電力ひっ迫回避で再生エネルギーなど最大限活用

会見に先立ち政府が発表したロシア外交官ら8人の追放については「総合的に判断した」と説明し、理由の詳細については発言を控えた。

今後の追加制裁では「日本としても石油を含むエネルギー全体のロシア依存度低減に踏み込む」と強調した。

一方、制裁の影響で懸念される日本のエネルギー不足の可能性に関し、「夏や冬の電力ひっ迫を回避するため再生エネルギーや原子力など脱炭素の効果の高い電源を最大限活用する」と明言した。

日本の対ロ制裁を受けたロシア政府報道官による対日報復措置発言に関しては、ロシアのウクライナ侵略に起因する制裁であり「日本への責任転嫁は不当で受け入れられない」と述べた。また「引き続きロシアにおける日本企業の保護には万全を期す」と強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

過度な変動への対応、介入原資が制約とは認識してない

ビジネス

米新興EVリビアン第1四半期は赤字拡大、設備改修コ

ビジネス

アングル:米企業のM&A資金、想定利下げ幅縮小で株

ビジネス

円安にはプラスとマイナス、今は物価高騰への対応重要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中