「1回の攻撃で奪う」 ロシアの「失敗」に学び、中国の侵攻作戦はどう変わった?

CHINA IS WATCHING

2022年4月27日(水)10時46分
ジョン・フェン(本誌記者)、デービッド・ブレナン(同)

「だが世界第2位の経済を誇り、100カ国以上にとって最大の貿易相手である中国にも、各国が同様の厳しい制裁を科すかどうかは分からない」と言う。「中国が台湾に対する武力行使を決断するとしたら、統一実現のためには高い代償も覚悟で臨むはずで、非常に恐ろしい事態になると思う」

今回の戦争勃発はヨーロッパを「震撼」させたと、ドイツ外交政策協会のタトロブは言う。台湾有事が現実味を増しているとみられているが、制裁は今回とは違って包括的ではなく的を絞ったものになるのではないかという。「ロシアへの制裁が、中国にとって台湾侵攻を選んだ場合の予行演習になる可能性は高い」

中国は既に欧米による制裁が主要部門に及ぼす経済的影響をデータ分析ではじき出し、同様の嵐を乗り切る方法の有無(とタイミング)を見極めようとしているだろう。

タトロブによれば、ドイツなどヨーロッパ各国は、プーチンの独裁を勢い付かせてきたことをようやく自覚しつつある。ウクライナ侵攻直前の2月4日、中国がロシアとの「限界のない」戦略的パートナーシップを主張したことも、同様の認識を促すかもしれない。

中国がロシアのウクライナ侵攻を強く非難したがらないのは、新冷戦の様相でもあり、中国が欧米とりわけアメリカに対して挑発的であることの表れだ。中ロの「世界秩序を変える」長期計画の本当の意味にヨーロッパはようやく気付き始めたと、タトロブは言う。

台湾は他国から軍事支援を受けられるか

中国の場合、台湾有事をめぐる最大の不確定要素は台湾が軍事支援を受ける可能性だ。中国はアメリカの介入は最小限という前提で軍事計画を策定していると、ほとんどの専門家はみている。中国が増強している核・長距離攻撃能力のターゲットは台湾ではない。日本、グアム、ハワイ、さらにアメリカ大陸の米軍基地を標的にして、アメリカを抑止するのが狙いだ。

220426p18_cis05.jpg

台湾有事にバイデンはどう対応する?EVELYN HOCKSTEIN-REUTERS

ロシアによるウクライナ侵攻の可能性に緊張が高まっていた昨年12月、ジョー・バイデン米大統領は米軍のウクライナ派遣は検討していないと明言し、これでプーチンとの核戦争のリスクは大幅に低下すると思われた。アメリカは台湾防衛に関しても、ロシアを上回る軍事力を誇り、その近代化が急速に進む中国という敵を相手に、難しい選択を迫られる。

それでもアメリカは意図的に曖昧な態度を続けている。3月9日の米下院軍事委員会公聴会でイーライ・ラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は、台湾についての対応は違ってくるとの見方を示した。「台湾有事の際はアメリカとの結び付きが特に強い同盟国の協力が得られると確信している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中