最新記事

経済制裁

ドイツのリゾート地、ロシアのオリガルヒめぐり対立 制裁かプライバシーか 

2022年3月25日(金)16時48分
ドイツ南部テガーンゼー湖に浮かぶボート

ドイツのリゾート地の政治家が今月、この地に住居を構えるロシアのオリガルヒ(新興財閥)への抗議活動を始めると、賛同者が集まる一方で、怒りの電子メールや脅迫めいた電話も来るようになった。写真はドイツ南部テガーンゼー湖に浮かぶボート。2020年7月撮影(2022年 ロイター/Michael Dalder)

ドイツのリゾート地の政治家が今月、この地に住居を構えるロシアのオリガルヒ(新興財閥)への抗議活動を始めると、賛同者が集まる一方で、怒りの電子メールや脅迫めいた電話も来るようになった。

「富裕層の聖域」となることに対するドイツ国民の二律背反的な心理を、この反応は映し出す。ドイツの文化は個人のプライバシーを尊重する一方、そのことが超富裕層の資産隠しを許してきたとの批判もある。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、英国、フランス、イタリア、スペインなどの欧州諸国はロシアの有力者が所有するヨットなどの資産を押収したが、ドイツは手をこまねいているように見える。

国会議員のリサ・パウス氏は「ドイツは長年、世界中から汚れたカネを引き寄せてきた。あまりにも長い間、われわれは十分な精査を怠り、そのツケに今苦しんでいる」と話す。

政府は、省庁横断的に制裁を実施するための作業チームを立ち上げようとしている。

バイエルン州の湖畔、テガーンゼー周辺のリゾート地は最近、ドイツとオリガルヒとの不穏な関係ゆえに注目を浴び、居心地の悪い思いをしている。地元民や高官らによると、ここにはウズベキスタン生まれのロシアの実業家、アリシェル・ウスマノフ氏が所有する住居が少なくとも3軒ある。

ウスマノフ氏は鉱業や通信などの事業に携わり、資産総額は英国の推計で180億ドル(約2兆1600億円)を超える。欧州連合(EU)は同氏に制裁を科す際、「親クレムリンのオリガルヒで、プーチン・ロシア大統領と特に緊密な関係にある」と説明した。

ウスマノフ氏の持ち株会社USMのウェブサイトには、同氏は企業家、投資家、そして「世界有数の寛大な慈善家」だと記されている。USMはコメントを控えた。同氏が保有する他の2社にもコメントを要請したが、返答はなかった。

テガーンゼーの南端、ロッタッハ・エーゲルンのトーマス・トマシェク町議会議員は今月、ウスマノフ氏を受け入れるのをやめよう、と呼びかける抗議活動を開始した。人口5000人のこの町ではレストランから大工、ホテル経営者までがウスマノフ氏の存在によって潤っている。

活動には党派を超えて300人の賛同者が集まったが、反発も湧き起こった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中