最新記事

ウクライナ

したたかで不屈の男...ゼレンスキ―が「大国」から国を守るのは、実は今回が2度目

A FIGHTING CHANCE

2022年3月18日(金)17時18分
ジェレミー・スタール

3日後の7月25日、ゼレンスキーはトランプとの電話会談に臨んだ。このときトランプはゼレンスキーに対し、バイデンが次男の税法違反疑惑について「訴追を阻止した」疑いを調べるために「あらゆる手を尽くす」よう、一層の圧力をかけた。

この電話会談の間、ゼレンスキーはトランプに取り入るような姿勢を示し続けたが、具体的な行動を確約することはなかった。トランプは満足せず、ウクライナへの約4億ドルの軍事支援を保留した。

ゼレンスキーが要求を受け入れなかった裏には、戦略的な理由もあった。アメリカで争う二大政党のうち一方に肩入れをしたように受け止められ、もう一方の支持を失うことはしたくなかった。

ゼレンスキーはこの電話でトランプにこびへつらいながらも、彼の要求を最後まで受け入れなかった。ゼレンスキーはトランプが選挙戦で使った「ヘドロをかき出す」というキャッチフレーズをまねていると言い、「あなたは私たちの偉大な手本だ」と褒めそやした。

後に「トランプがゼレンスキーを脅した」という内部告発を受けて、この会談の概略が公になると、ゼレンスキーは「卑屈だった」「トランプに同調しすぎた」という批判が起こった。しかし全力でトランプの機嫌を取り、それでいてウクライナを破滅に導きかねない要求に屈することがなかったという点で、ゼレンスキーの対応は完璧だった。19年9月には内部告発者が通話を暴露したことがきっかけで、保留されていたウクライナへの約4億ドルの軍事支援が承認された。

米議会は超党派でウクライナ支援を支持

一連の問題が明るみに出たことについては、ゼレンスキーも重要な役割を果たしていた。米民主党が告発内容の調査を立ち上げる1週間前、ゼレンスキーは同党のクリス・マーフィー上院議員に対し、ジュリアーニからバイデンを調査するよう圧力を受けていたと明かした。彼は最後の手段として、トランプの弁護士を「売った」のだ。

自分自身とウクライナにとって大きな惨事に発展していた可能性があるこの問題に、ゼレンスキーは巧みに対処した。その結果、彼はウクライナへの巨額の軍事支援について、米議会で超党派の支持を得た。

トランプの1回目の弾劾訴追の翌年である20年には、ウクライナに対して2億5000万ドルの安全保障関連支援と、対戦車ミサイル「ジャベリン」150基の提供が超党派の支持によって承認された。大統領となったバイデンは昨年、ウクライナに武器を提供しないというオバマ元政権の方針を覆し、1億2500万ドルの軍事支援と、ジャベリンの追加提供を承認。これも超党派の支持によるものだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

商品市場が急落、次期FRB議長指名受けたドル高が圧

ビジネス

次期FRB議長、FOMC説得に「難しい舵取り」=ア

ワールド

米1月雇用統計、政府閉鎖で発表延期 12月雇用動態

ワールド

ゼレンスキー氏「エネ・インフラへの新たな攻撃なし」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 5
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 6
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 7
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    共和党の牙城が崩れた? テキサス州で民主党が数十…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中