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ウクライナ情勢

ウクライナ、非常事態を宣言へ ロシアからの自国民退避勧告も

2022年2月24日(木)08時29分
ウクライナ政権の会議

ウクライナでは23日、非常事態宣言の発令が議会で承認され、ロシア在住の自国民に対する退避勧告も出された。22日撮影。提供写真(2022年 ロイター/Ukrainian Presidential Press Service/Handout via REUTERS)

ウクライナでは23日、非常事態宣言の発令が議会で承認され、ロシア在住の自国民に対する退避勧告も出された。一方、ロシアはウクライナ国内の外交施設の職員退避に着手。ロシア軍の攻撃を巡る懸念が高まっている。

ウクライナ東部の境界線では砲撃が激化。目撃者によると、23日にはロシア国境からウクライナ東部のドネツク市方面に向かって軍の車列2つが移動していることが分かった。

ロシアのプーチン大統領がウクライナに集中攻撃を実施するかどうかはなお定かではないが、米国防総省高官は23日、ロシアがウクライナとの国境沿いに集結させた軍部隊のうち80%が全面的な侵攻が可能な位置に配備されているとし、プーチン大統領はいつでもウクライナを侵攻できる状態にあるとの見方を示した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアや分離主義者による次の措置、またはロシア大統領の個人的な決断がとのようなものになるのか予測できない」と述べた。

このような不確実性と西側諸国による対ロシア制裁の拡大が金融市場を揺るがせている。ロシアの通貨ルーブルは約3%下落した。

バイデン米大統領は23日、ロシア産の天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」の事業会社ノルドストリーム2AGとその幹部に対し制裁を科すと表明。声明で、制裁を発動するよう政権に指示したことを明らかにし、米政権はノルドストリーム2への対応を巡りドイツと連携していると述べた。

ホワイトハウスによると、ノルドストリームの運営会社で株主委員会会長を務めるシュレーダー元独首相は制裁の対象に含まれないという。

一方、トラス英外相は23日、ロンドン市場でロシアの国債発行をできなくする考えを明らかにした。

市場では、原油価格は序盤の下げからプラス圏に転じる一方、米国株はウクライナの緊急事態宣言を受け下落した。

ウクライナでは議会が全土に非常事態宣言を発令することを承認。宣言の期間は30日間で、さらに30日の延長が可能。宣言の草案によると、予備役の移動制限や大規模な集会やストライキの禁止、情報やメディアの報道規制、個人の文書検閲などが含まれるほか、必要に応じ夜間外出禁止が発出される可能性があり、24日から実施される

またウクライナ軍は23日、予備役の招集を開始したと発表した。

さらにウクライナで23日、政府、外務省、国家保安機関のウェブサイトがアクセス不能になった。

ロシア側は侵攻計画を否定しているが、ウクライナとの国境沿いに配備された軍隊を撤退させていない。

23日にはロシアは、ウクライナ国内の外交施設に勤務する職員を全員退避させ始めた。ロイター記者によると、キエフのロシア大使館のほか、オデッサの領事館が国旗を降ろした。

こうした中、西側諸国は本格的な侵攻に備えてこれまで以上に厳しい制裁を準備しているという。

欧州連合(EU)首脳は24日に緊急サミットを開催し、ロシアによるウクライナ東部・親ロシア派地域の独立承認を巡り次の対応について協議する予定。

EUの執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス副委員長(通商担当)は23日、ロシア軍がウクライナ東部の親ロシア派地域を超えて侵攻した場合、輸出規制を含む対ロシア制裁第2弾を発動する用意があると述べた。



[ロイター]


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