最新記事

寒い日は鍋だ!という人のほとんどが知らない「鍋の素」の残念な正体とは

2022年2月10日(木)17時48分
安部 司(『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事) *東洋経済オンラインからの転載
鍋料理

手軽に安くハズレのない味が作れる鍋の素。でも、こんなに安い理由はなぜ? kuppa_rock - iStockphoto

食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、新聞、雑誌、テレビにも取り上げられるなど大きな反響を呼んだ『食品の裏側』を2005年に上梓した安部司氏。70万部を突破する大ベストセラーとなり、中国、台湾、韓国でも翻訳出版され、いまもなおロングセラーになっている。
その安部氏が、『食品の裏側』を発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、このたび『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』を上梓した。15年の間に書きためた膨大なレシピノートの中から、たった5つの「魔法の調味料」さえ作れば、簡単に時短に作れるレシピを厳選した1冊だ。
発売後、たちまち6刷5万部を突破し、各メディアで取り上げられるなど、大きな話題を呼んでいる安部氏が「寒い日は鍋だ!という人のほとんどが知らない『鍋の素』の残念な正体」について語る。

「鍋はヘルシー」と思い込んでいませんか?

寒い日が続きます。各地で大雪や吹雪が吹き荒れ、私の住む北九州市にも寒波襲来で雪が降りました。

こんなときにうれしいのが鍋料理。熱々の鍋は、体も心も温まるものです。鍋は野菜もたんぱく質もたっぷり摂れて栄養バランス満点。調理に油を使わないし、非常にヘルシーです。

ところが、いつの頃からか、家庭における鍋は「鍋の素」を使うのが当たり前という風潮になっているようです。

「おいしくて便利な〇〇鍋の素」などとテレビでしきりに宣伝されるようになり、スーパーではキムチ鍋、ごま担々鍋、豆乳鍋、トマト鍋など、あらゆる種類の「鍋の素シリーズ」がズラリと並びます。

「レトルトタイプ」「濃縮ボトルタイプ」「1人前のポーションタイプ」「キューブタイプ」など、形状もいろいろで、一大市場となっていることがうかがえます。

しかし私はこの「鍋の素」について疑問を呈したいのです。

なぜなら長年食品開発に関わり、添加物を知り尽くした私が見れば、多くの鍋の素が「添加物やエキス類」を駆使して「コスト優先」で作られているとしか思えないからです。

では実際の「鍋の素」の原材料をもとに、どのようなコスト感覚でつくられているかを検証していきましょう。

下記は、とある「キムチ鍋の素」の原材料です。

「キムチ鍋の素」の正体は?

★キムチ鍋の素
アミノ酸液、果糖ぶどう糖液糖、みそ、食塩、醸造酢、魚醤(魚介類)、にんにく、唐辛子、ごま油、トウバンジャン、たんぱく加水分解物、野菜エキス、酸味料、ポークエキス、チキンエキス、煮干し粉末、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、パプリカ色素、増粘剤(キサンタンガム)*メーカーによって違いがあります
 

ここで注目すべきは「アミノ酸液」です。これは簡単に言えば「たんぱく加水分解物」の液体のもの。「たんぱく加水分解物」とは、たんぱく質を塩酸分解して作るうま味の素です。

「アミノ酸液」は脱脂大豆を塩酸で分解して作る調味液で、しょうゆの置き換えとして使われます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中