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寒い日は鍋だ!という人のほとんどが知らない「鍋の素」の残念な正体とは

2022年2月10日(木)17時48分
安部 司(『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事) *東洋経済オンラインからの転載

なぜしょうゆを使わずに「アミノ酸液」を使うのか、それはひとえに「コスト」の問題です。アミノ酸液はだいたい1リットル100~200円程度ですから、しょうゆを使うよりはるかにコスト安になります。

この「アミノ酸液」、味はどうかというと、たしかにしょうゆのような味ですが、「独特の味」とにおいがあります。私の表現では「もわっとして、とげとげしい味」。しょうゆが持つまろやかさには、とても及びません。でも他の調味料と混ぜればごまかすことができます。

books20220210b.png『食品の裏側』で詳しく紹介し、「日本人の舌を壊す『黄金トリオ』の超ヤバい正体」でも述べたことですが、「①食塩(精製塩)」「②調味料(化学調味料)」「③たんぱく加水分解物」という、うま味のベース(黄金トリオ)がそろえば、味がしっかり決まり、簡単に「おいしい」と思える味を人工的に作り出せるのです。

それから「醸造酢」にも注目してください。これは小麦やトウモロコシを使った穀物酢で、『安部ごはん』で「魔法の調味料」を作る時に推奨している「米酢」より、はるかにコストが安い。つまり「米酢の置き換え」で使われるのです。

そしてなんといってもこの「キムチ鍋の素」には、「キムチ」が使われていません。

「黄金トリオ」と「ポークエキス」「チキンエキス」「トウバンジャン」「酸味料」で「キムチ鍋風の味」を出しているだけ。「パプリカ色素」が使われているのは、キムチっぽい色を出すためでしょう。

保存の問題があるし、「液状」にしないといけないから、「鍋の素」に本物のキムチは使えないのです。

しかし、このキムチ鍋、目隠しの状態で口に入れられたら、「キムチ鍋」とわからない人が多いのではないでしょうか。動物性のだしの入ったスンドゥブみたいなものに間違えるような気がします。

キムチのおいしさは「乳酸発酵」にあります。「乳酸のさっぱりした酸味」がおいしさのカギですが、このキムチ鍋にはそれがない。私の考えるキムチ鍋とは別モノです。

「野菜たっぷりの寄せ鍋の素」は?

もうひとつ見ていきましょう。「野菜たっぷり寄せ鍋」です。

★野菜たっぷり寄せ鍋の素
たんぱく加水分解物(大豆を含む)、ブドウ糖果糖液糖、しょうゆ、米発酵調味料、かつおぶしエキス、食塩、魚介エキス(えびを含む)、野菜エキス、酵母エキス/調味料(アミノ酸等)、増粘剤(キサンタン) *メーカーによって違いがあります
 

これも「たんぱく加水分解物」「食塩」「調味料(アミノ酸等)」がそろい踏み。典型的な「黄金トリオ」です。あとは「エキス類」を使って味を補っています。

それから「米発酵調味料」。これは本みりんの代わりに使います。米をアルコール発酵させて、「水あめ」「うま味調味料」「酸味料」などで味を調えたものです。

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