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中台関係

中国に軍事力で劣る台湾が的を絞る非対称戦術

China Wants to Take Taiwan 'Without a Fight,' Says Defense Report

2021年11月12日(金)11時19分
ジョン・フェン
中台戦争イメージ

緊迫の度を強める中台関係 REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

<中国は圧倒的な軍事力を背景に、台湾の領空を侵犯するなど度重なる「脅し」で台湾軍の戦意を失わせるグレーゾーン戦略を展開している、と台湾の国防報告書は警告>

中国は、台湾を脅して屈服させ、1発の弾も撃たずに手に入れるための多次元戦略の一環として、広範にわたる軍備拡張を続けている。

台湾が11月9日に公表した2021年版国防報告書で示した見方だ。2年に1度発表される報告書のなかで、台湾海峡を挟んだ30年にわたる攻防を振り返っている。

台湾のこの報告書は、7月に発表された日本の防衛白書が提示した知見と懸念の多くが共通している。台湾の報告書は中国について、海上の戦争抑止の最前線にあたる、いわゆる第一列島線をはるかに越える野心を抱いていると述べている。

台湾の邱国正(チウクオチョン)国防部長(国防相)は報告書序文のなかで、米国と中国のあいだで起きつつある「戦略的競争」の渦中に台湾が巻き込まれていると述べ、中国は「総合的な国力を利用して、地政学的な影響力を広げている」と指摘した。

台湾の情報機関である国家安全局の前局長で、2月の内閣改造で国防部長に任命された邱は、台湾が自国の防衛に関して「疑いようのない決意と能力」を示していると述べつつも、中台の衝突を防止するうえで、台湾の同盟諸国が果たす可能性のある重要な役割について、初めて公に言及した。

邱は、地域の平和を維持できるのは「集合的な力」だけだ、と述べた。「地域のパートナーや志を同じくする諸国が一致団結して安全保障協力を推進し、地域における持続可能と発展を維持するための責任を共に担うことを期待する」

中台の軍事バランス

市場調査企業スタティスタによる以下のグラフからは、中台間の軍事的不均衡がいかに大きいかが見て取れる。

taiwanchart1112-1.png

日本の防衛白書は、中国は「台湾に対する武力行使を放棄しない意思を示し続けて」いると述べている。この点は、中国の習近平国家主席や中国政府の広報官もたびたび強調している。だが台湾の国防報告書は。中国人民解放軍(PLA)は台湾侵攻に備えた軍事演習を継続しており、これには台湾に脅威を与える目的もある、と述べている。

台湾の懸念のなかでもとりわけ切迫しているのが、「グレーゾーン」戦略だ。いやがらせを行い、プレッシャーを与えて相手を威圧するが、最終的に戦争には至らない戦略のことだ。国防報告書では、その筆頭として、台湾領空、あるいは領空近くでのPLA空軍の頻繁かつ大規模な活動、近海での軍事演習の強化といった中国の軍事的威嚇を挙げている。

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