最新記事

気候変動

<COP26>石油メジャーに脱石油させるには?──米議員の戦い

Big Oil to Testify on Climate Change Disinformation—What This Could Mean for Green Economy

2021年11月8日(月)10時23分
アレックス・ルーハンデ
アメリカの製油所

石油メジャーの嘘を暴き立てるだけではだめだと、石油業界と戦う米議員は言う(2015年、カリフォルニア州カーソンの精油所) Mike Blake-REUTERS

石油メジャー数社の幹部が10月28日、米連邦議会下院の監視・改革委員会の公聴会に初めて出席した。石油業界が、化石燃料が地球温暖化に与える影響に関する科学的事実を覆い隠そうとしているという指摘に答えるためだ。

エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェルなどの石油大手の内部文書によれば、石油各社は1980年代から、化石燃料排出物が及ぼす甚大な悪影響をめぐる科学的知識を持っていたことが示唆されている。にもかかわらずこれらの企業は、気候変動を裏づけるデータを打ち消すことを狙ったロビー活動や、秘密裏の研究資金提供を通じて、自社製品の有害性に関する誤った情報を拡散をさせたとされている。

そうした裏工作には近年、厳しい視線が向けられるようになっていた。特に、最近行われた英グリーンピースの調査は決定的だった。

グリーンピースのジャーナリストは、身元を隠したうえで、エクソンの連邦政府関係チーム担当シニアディレクターを務めるキース・マッコイにZoomインタビューをおこなった。そのなかでマッコイは、エクソンが「影の団体」と協力して、気候変動をめぐる初期の取り組みを妨害したことや、いくつかの科学的事実に反する「闘い」を続けてきたことを認めた。

ターニングポイントになるか

このレポートを受け、カリフォルニア州選出の下院議員で監視・改革委員会の環境小委員会の長を務めるロー・カンナは、エクソンなどの石油大手を、議会での質疑に出席させるつもりだと言った。この公聴会は世論のターニングポイントになる可能性がある、とカンナは本誌に語った。

bigoil1107.jpeg
石油メジャーと戦うロー・カンナ米下院議員(民主党)は、当事者すべてを勝ち組にできなければ脱炭素は進まないと言う  Pedro Nunes-REUTERS

「米国民のほとんどは、これらの企業が(気候変動を否定するために)行なってきたことや、現在も行い続けていることについて認識していない。ひとたび認識すれば衝撃を受け、反対の世論が一気に高まるだろう」とカンナは述べた。「われわれがしなければならないのは、そうした企業の悪行を衆目にさらし、米国の世論を変えることだ」

糾弾されている問題について公の場で答えさせることで、これらの企業に「誤った情報の拡散やロビー活動をやめさせ、実際に行動を変えさせる」動機づけができるはずだとカンナは述べた(結果的に、歴史的な公聴会はそれほどの注目を集めるには至っていない)。

石油各社は、過去には自社でPR活動やロビー活動を実施していたが、最近ではそうした活動を、米国石油協会(API)などの業界団体を通じて行うようになっている。APIは、議会に対するロビー活動を行う非営利組織で、最新の納税申告書によれば、2億3900万ドル近い巨額の収入がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」 

ワールド

米、対外援助組織の事業を正式停止

ビジネス

印自動車大手3社、6月販売台数は軒並み減少 都市部

ワールド

米DOGE、SEC政策に介入の動き 規則緩和へ圧力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 9
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中