最新記事

子育て

タワマン暮らしの子どもたちが陥る、危ない「高所平気症」

2021年10月13日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
高層階に住む赤ちゃん

東京都心の中央区や港区では、高層階に住む乳幼児の割合が3割を超えている lolostock/iStock.

<乳幼児を高層階で育てると、子どもが高さへの恐怖を感じられない危険が指摘されている>

東京都心の虎ノ門に、54階の超高層ビルが建設されている。入るのはオフィスや商業施設等だが、高層階には一般住宅も入るらしい。50階以上の天空の暮らしとはどういうものか、下々の筆者には想像も付かない。

当然、子どもがいる世帯も入居すると思われるが、高さの感覚が育っていない乳幼児の場合、「高所平気症」が懸念される。高所から下を見下ろしても怖さを感じないことで、幼児がベランダから身を乗り出して転落する事故も相次いでいる。

タワマンの高層階に住む子どもは、超マイノリティーと思われるかもしれない。全国的に見れば、確かにそうだ。0~4歳の乳幼児498万1244人のうち、共同住宅の11階以上に住んでいる子どもは9万8816人(総務省『国勢調査』2015年)。パーセンテージでは1.98%でしかない。

だが地域差があり、都市部ではこの数値は高い。高層階に住む乳幼児の割合を都道府県別に出し、高い順に並べると<表1>のようになる。

data211013-chart01.png

全国値は1.98%だが、県別にみると0.11%から5.93%までの開きがある。奈良では11階以上の高層階に住む子は909人に1人だが、東京では17人に1人だ。東京は狭いが、人口がどっと押し寄せ、経済や文化の中枢としての機能も集中している(コロナ禍で変化の兆しはあるが)。そこで狭い土地を有効活用せんと、東京は「空」に伸び続けている。

東京の都心では少子化など「どこ吹く風」。子どもが増え続け、湾岸エリアの学校は悲鳴を上げている。タワマンに越してくる家族のためだが、今後、高層階で暮らす子どもは増えていくだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ249ドル安 トランプ関税

ワールド

トランプ氏、シカゴへの州兵派遣「権限ある」 知事は

ビジネス

NY外為市場=円と英ポンドに売り、財政懸念背景

ワールド

米軍、カリブ海でベネズエラ船を攻撃 違法薬物積載=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中