最新記事
地球

「地球は8600万年前、12度傾いていた」との研究結果

2021年10月29日(金)18時30分
松岡由希子

8600万年前の地球は現在に比べて12度傾いていた cicerocastro-iStock

<東京工業大学地球生命研究所らの研究チームは、「8600万年前の地球は現在に比べて12度傾いており、7800万年前に現在の位置に戻った」との研究を発表した>

地球に対して地軸の位置が変化する「真の極移動(TPW)」は、固体地球の質量分布の変化によって起こると考えられているが、その発生頻度やプロセスについてはまだ完全に解明されていない。これまで「白亜紀後期のおよそ8400万年前に『真の極移動』が起こったのではないか」との仮説が議論されてきた。

7800万年前に現在の位置に戻った

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の主任研究員で米カリフォルニア工科大学のジョセフ・カーシュビンク教授らの国際研究チームは、イタリア・アペニン山脈の石灰岩に残された古地磁気データを分析。「8600万年前の地球は現在に比べて12度傾いており、7800万年前に現在の位置に戻った」との研究論文をオープンアクセスジャーナル「ネイチャーコミュニケーションズ」で発表した。これは、既知で最も直近に起こった大規模な「真の極移動」だ。

True_polar_wander.jpg

真の極移動 Victor C. Tsai/Wikimedia Commons/Public Domain

地球は、鉄やニッケルなどからなる固体の内核を液体金属の外核が覆い、固体のマントルや地殻がその上をゆっくりと移動している。多くの岩石には、外核によって生成される局所磁場の方向が記録されている。

たとえば、微生物によって生成されるマグネタイト(磁鉄鉱)の結晶は岩石が固まると堆積物に閉じ込められ、その磁性によって磁場の方向を追跡できる。「真の極移動」は地球の磁極が地表に対して相対的に移動する現象であり、地球の磁場そのものは変化しないものの、岩石は移動に伴って異なる地磁気記録を残す。

100万年あたり3度のペースで「往復」で24度振幅

研究チームは、イタリア・中央アペニン山脈のアピロ・ダム湖と北アペニン山脈のフルロ近くで、1億4550万年前から6550万年前の白亜紀に生成された石灰岩のサンプル計7個を採取し、これらに残された地磁気記録を分析した。

news-28518-a.jpg

(Ross Mitchell)


地磁気データを用いて100万年間隔でイタリアの平均的な伏角と偏角を計算した結果、8600万年前から7900万年前までの700万年間に12度振動していたことがわかった。100万年あたり3度のペースで「往復」で24度振幅したことになる。

「白亜紀後期に『真の極移動』は発生しなかった」とするこれまでの研究結果について、研究チームは「十分なデータポイントを調査できていなかったのではないか」とみている。

米ライス大学の地球物理学者リチャード・ゴードン教授は今回の研究結果の意義について「豊富な古地磁気データに基づくこの研究は非常に斬新だ」と評価している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ地区最大都市ガザ市に地上侵攻 国防

ワールド

米、自動車部品に対する新たな関税検討へ 国家安保上

ビジネス

米8月小売売上高0.6%増、3カ月連続増で予想上回

ビジネス

米8月製造業生産0.2%上昇、予想上回る 自動車・
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中