最新記事

米移民危機

フェイクニュースでハイチ移民がアメリカに殺到!? トランプは大喜び

Mayorkas Concerned Haitians Receiving 'False Information' U.S. Border Is Open

2021年9月21日(火)22時47分
アレクサンドラ・ハッツラー
ハイチ移民

前にも見た光景(大統領暗殺と大地震による国情不安からアメリカに渡ろうとするハイチ移民、9月20日) Go Nakamura-REUTERS

<押し寄せる移民のあまりの数に、当局は「国境が開いた」というデマが流れたのではないかと打ち消しに必死。トランプは「このままでは第三世界になる」と高笑い>

アメリカとメキシコの国境地帯で移民危機が再燃するなか、ドナルド・トランプ前大統領は、このままではアメリカが「第三世界の国」になるとの見方を示した。

「アメリカはまもなく、第三世界の国とみなされるようになるだろう」と、トランプは9月20日付の声明で述べた。「我々の国境で今起きているような事態は前代未聞だ。すでにごまんという人々が殺到しているが、これをはるかに上回る人数がやってこようとしている!」

前日の声明でもトランプは主張した。「我々の国は、急速に悪人の巣窟と化しつつある」「人殺しや、違法薬物の密売人、犯罪者」が、ハイチおよび南米やアフリカの諸国からアメリカに移民として流入している。

トランプはかねてから、移民がアメリカの経済と文化を損なっているとの主張を行っている。最新の両日の声明は、ハイチからの移民数千人が、保護を求めてアメリカの南側の国境に到来する中で発されたものだ。

ハイチからの移民が到来するようになったのは、7月7日に同国の大統領が暗殺され、さらに8月14日にマグニチュード7.2の地震が発生してからのことだ。8月の地震の死者は2200人近くに達し、けが人は1万2000人を超えた。また、家屋への被害も、全壊・半壊の合計で10万戸以上にのぼった。

バイデン政権は、移民を本国に送還する動きを加速させている。メキシコとの国境に位置する町、テキサス州のデル・リオには、9月18日の時点で少なくとも1万4000人の移民が詰めかけている。国境警備隊は最近になって、国境地帯に遺棄されていた幼い子どもを複数人発見している。

米国土安全保障省(DHS)のアレハンドロ・マヨルカス長官は20日、記者団に対して、「こうした非正規の移住ルートを選んだハイチの人々が、『国境が開放された』とか、『一時保護資格(TPS)が適用される』といった、誤った情報を受け取っていることを非常に懸念している」と述べた。「アメリカに入国できるルートはない。それが正式見解であることを、ここでいま一度はっきりさせておきたい。それ以外は誤った情報だ」

共和党に所属する26州の知事は9月20日、バイデン大統領に書簡を送付した。メキシコ国境の状況を「国家安全保障上の危機」と呼び、この問題を議論するための会合を開くよう大統領に要求したのだ。

書簡は、「不法な越境行為」が、「国際的な犯罪活動の急増」を招いており、「人身売買や薬物の不法取引に従事する犯罪者がせきを切ったように流入し、我々の州の住民の健康や安全を危険にさらしている」と述べている。

「我が国の南側の国境で起きた危機は、今やすべての州へと広がっている。事態がさらに悪化する前に、早急に行動を起こす必要がある」と、州知事らは主張した。この書簡には、バーモント州のフィル・スコット知事を除く、共和党所属のすべての知事が署名した。

一方、50人超の民主党議員は9月17日にマヨルカスに対し、ハイチから来た難民を本国に送還することをやめるよう求める書簡を送付した。

書簡起草者の1人であるマサチューセッツ州選出のアヤンナ・プレスリー下院議員は、声明でこう述べている。「ハイチが政治・公衆衛生・経済の面で史上最悪の危機に見舞われている中で、バイデン政権は、ハイチ人を不当に本国送還し続けている。バイデン政権が、『ハイチ人コミュニティーを支えるためにできることはすべてしている』と主張することは許されない」
(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林官房長官が政策発表、1%程度の実質賃金上昇定着な

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ビジネス

GLP-1薬で米国の死亡率最大6.4%低下も=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中