最新記事

移民危機

非人道レベルに達した米移民危機、国境当局で辞任相次ぐ

Trump Isn't Sure If He Ever Spoke to CBP Head, Despite Controversies

2019年6月26日(水)19時30分
ラムジー・タッチベリー

メキシコ国境からアメリカに不法入国し、国境警備局の施設に収容された子供(3月28日、テキサス州エルパソ) Jose Luis Gonzalez-REUTERS

<記録的なペースで流入する不法移民やその子供が非人道的な環境に放置され、トランプ政権にも危機感がないことに対する抗議の辞任か?>

国境管理を統括する米税関・国境警備局(CBP)のトップであるジョン・サンダース局長代行が6月25日に辞任の意向を明らかにした。移民危機の最中の突然の辞任に、注目が集まっている。

サンダースは辞任理由を明らかにしていない。だがCBPは、メキシコとの国境地帯で拘束された不法移民の子供たちにまともな衛生環境さえ提供できず、ベッドもなくコンクリートの床に直接寝るという非人道的な扱いをしていることで、厳しい批判を受けてきた。

<参考記事>トランプ政権が生んだ、命も危ない児童移民収容所

辞任直前にはちょっとした事件もあった。司法省の法務担当者が、拘留中の供たちに法律が求める安全で衛生的な生活を提供するためには、石鹸や歯ブラシ、歯磨き粉、ベッドは必ずしも必要ない、と連邦裁判所で証言したのだ。サンダースは在任中、まさにそうした品々を確保する必要性を訴えていた。

ホワイトハウスの記者会見でトランプは、サンダースに辞任を求めたことはないと語った。サンダースは今年4月にトランプの指名でCBPの最高責任者に就任したばかり。トランプによれば、2カ月の短い任期中、サンダースと直接やり取りしたことはなかったと、他人事のように言った。

自分で指名しておきながら、「彼と話したことはないと思う」と、トランプは言った。「CBPの運営にはいい人材をあてているはずだし、そのことについて、私は何も知らない。彼はとてもいい人だと聞いている。直接は知らないが」

子供たちはたらい回し

ここ数カ月、移民政策関連機関の最高幹部の辞任が続いている。税関・国境警備局を監督する米国土安全保障省(DHS)の長官を務めていたキルステン・ニールセンも4月に辞任した。現在、DHSと移民税関執行局(ICE)責任者はどちらも代理が務めている。

移民政策に関わる機関で最高幹部の異動が多いのは、トランプが「自分の政治課題に合わせようと、無意味な人事の入れ替えを続けることで」リーダーシップを主張しているからだ、と上院国土安全保障委員会のベニー・トンプソン議長(民主党)は批判する。

アメリカとメキシコの国境を越えて逮捕される不法移民が記録的な数に上るなか、対応する米政府諸機関の側では資金と人材の不足が深刻化している。不法移民の子供を一時的に収容する施設が「受け入れ難い惨状」と批判されると、当局は数百人の移民の子供をまだ余裕のある施設に移送しようとした。だが移送している間に目指す施設も過密状態になったため、移送した子供のうち100人をわずか一日で元の施設に連れ帰ることになったほどだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中

ワールド

世界貿易、AI導入で40%近く増加も 格差拡大のリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中