最新記事

中国不動産

中国版リーマン・ショック、「恒大」破綻危機で世界経済どうなる?

U.S. Markets Take Major Dive Amid Potential Collapse of Chinese Property Giant Evergrande

2021年9月21日(火)13時29分
アレックス・ルーハンデ
恒大グループのマンション群

建設が中断した恒大グループのマンション群(河南省洛陽市、9月16日) Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

<ダウ平均、中国不動産開発大手「恒大グループ」の経営危機めぐる懸念で大幅下落>

週明け9月20日のニューヨーク株式市場では、中国第2位の不動産開発企業「恒大グループ」の経営悪化に対する懸念から、株価が下落。ダウ平均は前週末比500ドル以上下落して取引を終えた。

恒大グループについては先日、20日が期限となっている銀行融資の利払いができない見通しが判明。複数のメディアが、経営破たんの可能性を指摘していた。

3000億ドル超にのぼる負債を抱えている恒大グループは、建設プロジェクトが停滞して現金収入が大幅に悪化。物件保有者や投資家からの圧力が高まりつづけるなか、借金地獄から抜け出せずにいる。

同社がデフォルト(債務不履行)となれば、物価上昇率の下落を招いて中国経済はもちろん、中国の製造部門に出資している海外企業にも大きな影響が及ぶことになるだろう。

世界的な投資戦略企業ヤーディニ・リサーチのエドワード・ヤーディニ社長は20日、米経済専門チャンネルCNBCのインタビューに対して、恒大グループの危機は他の中国企業にも連鎖反応をもたらし、株価の下落が続きかねないと述べた。

リーマン危機よりLTCM危機に近い?

今回の事態について、金融業界では中国版リーマン・ショックの発生を危惧する声もある。アメリカ第4位の投資銀行だったリーマン・ブラザーズの破たんは、2008年の金融危機を招いた。それと同様、年間380万人を雇用するとされる恒大グループが破たんすれば、中国経済全体に壊滅的な悪影響がもたらされる可能性がある。

しかしヤーディニは、恒大グループの危機はリーマン・ショックよりも、1998年のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破たんに近いとの見方を示した。同ヘッジファンドは1997年のアジア通貨危機と1998年のロシア通貨危機の影響で、4カ月足らずの間に46億ドルの損失を出して破たんした。

だがリーマン・ブラザーズが倒産して買収されたのと異なり、LTCM危機の際にはFRB(米連邦準備理事会)が迅速に対処。数多くの銀行がLTCMの救済に乗り出し、最終的にこれが、世界経済に深刻な悪影響が及ぶのを阻止した。ヤーディニは今回の恒大グループの危機についても、最終的には中国政府が介入して、長期的な影響が出ないような方法で債務再編を行い、同社の破たんを阻止するだろうと予測している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中